ムーンライト

ムーンライト

構成・演出:村川拓也

この現実の中に、確かにあるものへ―。
過去と現在を重ね"生"に触れるドキュメンタリー・ドラマ

身体に障害のある人の介護・介助を題材にした『ツァイトゲーバー』(F/T11公募プログラム)も国内外で高く評価された村川拓也が8年ぶりにF/Tに参加する。
村川との対話とピアノの発表会の形式をとった本作の主人公は、ベートーベンの「月光」に惹かれてピアノを始めた、京都に暮らす70代の男性。質問に導かれ、音楽との出会い、20歳から今日まで続く目の病とのつきあいを始めとする人生の断片が浮かび上がってくるなか、さまざまな世代のピアノ演奏者たちが登場、彼の記憶を彩る曲を演奏する。そして、最後の一曲「月光」が披露される時がやってくる―。
実在の人物やその語りといったリアルな題材を、劇場での再現や演技と交錯させる手法は、現実の中に確かに存在するにも関わらず、見過ごし、聞き逃している大切な何かとの出会いへと観客をいざなう。

アーティスト・コメント

村川拓也

8年ぶりに再びF/Tで作品を上演できる事を嬉しく思います。フェスティバルテーマにある「想像力」という言葉を聞いてふと気づいたのは、コロナウイルスの影響で毎日が今までより慌ただしくなり、自分が、明日や来週や1ヶ月後といった少し先の出来事について、より頻繁に想像するようになっているということです。そして、その想像した事が現実になったり、現実にならなかったりと日々結果が更新され、そのスパンをものすごく早いペースで繰り返している。どこかに座ってゆっくり何かを想像して、それが現実になる事を気長に待つ時間は、なんとなく良い時間な感じがしますが、毎日のように近い未来を想像しつづける行為というのは、悪くはないものの、かなり疲れるというかきついなと感じています。この作品はスピードがゆっくりなので、是非劇場に来ていただき、この作品を観ていただいている時間だけは、ハイスピードに想像力を使わずに済むように、ぼやっとしながら観劇していただけるのではないかと思います。

▼ 【ドラマトゥルクの上演ノート】

公演情報

公演名 ムーンライト
日程 10/31(Sat) 18:00 開演
11/1(Sun) 15:00 開演
*受付開始は開演の1時間前、開場は30分前
会場 東京芸術劇場シアターイースト
上演時間 約70分(予定)
上演言語 日本語
チケット種類 自由席(整理番号つき)

チケット

一般前売り ¥3,500
先行割引 ¥2,500※1
学生

¥2,300※2

高校生以下 ¥1,000※3

※1 販売期間:9/9(Wed)-9/12(Sat)

※2 当日券共通。当日受付で要学生証提示

※3 当日券共通。当日受付で要学生証または年齢確認可能な証明書の提示
※4 未就学児の入場はご遠慮ください。

F/Tチケットセンター

オンラインで予約する

(24時間受付)

アーティスト・プロフィール

村川拓也(構成・演出)

演出家、映像作家。映像、演劇、美術など複数の分野を横断しつつ、ドキュメンタリーやフィールドワークの手法を用いた作品を発表する。
介護する/される関係を舞台上で再現する『ツァイトゲーバー』(F/T11公募プログラム)は、HAU(ベルリン)の「Japan Syndrome Art and Politics after Fukushima」(14)を始め国内外で上演を重ねている。16年東アジア文化交流使(文化庁)として中国・上海/北京に滞在。フェスティバル/トーキョーには『言葉』(12)以来の参加となる。
京都芸術大学舞台芸術学科・映画学科非常勤講師。

林立騎

林 立騎(ドラマトゥルク)

ドイツ・フランクフルトの公立劇場キュンストラーハウス・ムーゾントゥルム企画学芸員(ドラマトゥルク)。翻訳者、演劇研究者。
翻訳書にエルフリーデ・イェリネク『光のない。』(白水社、第5回小田島雄志翻訳戯曲賞)、共編著に『Die Evakuierung des Theaters』(Berlin Alexander Verlag)、翻訳にハンス=ティース・レーマン「ポストドラマ演劇はいかに政治的か?」等。

キャスト・スタッフ

構成・演出 村川拓也
ドラマトゥルク 林 立騎
出演 中島昭夫 他
舞台監督 浜村修司
照明 葭田野浩介(RYU)
音響 佐藤武紀
映像 城間典子、北川航平
演出補佐 長澤慶太(京都芸術大学 舞台芸術研究センター)
演出部 中井尋央(URAK)
プロデューサー 武田知也
制作 清水 翼(KANKARA Inc.)
製作 ロームシアター京都(初演 2018年12月 京都市西文化会館ウエスティ)

宣伝美術 TAICHI ABE DESIGN INC.
制作 鈴木千尋(フェスティバル/トーキョー)
主催 フェスティバル/トーキョー

会場アクセス

東京芸術劇場 シアターイースト

  • JR他「池袋駅」西口より徒歩2分(駅地下通路2b出口と直結)

上演ノート

『ムーンライト』の再演に寄せて

ドラマトゥルク:林 立騎

 村川拓也の『ムーンライト』はとてもシンプルな作品だ。

 舞台上には椅子が二つと、グランドピアノが一台。京都に暮らす今年で76歳の男性が、演出家の質問にうながされ、話しはじめる。かれの人生は、今にいたるまで続く目の病と、子どもの頃から折おりに聴き、のちにピアノで弾くようになったクラシック音楽の曲たちとともに、語りなおされていく。合間にさまざまな年代の演奏者があらわれ、その曲を弾く。

 かれは俳優ではない。70年以上を生きてきて、あるとき、それまで何の関係もなかった演出家がやってきて、自分の人生が作品として上演される。観客として訪れるわたしたちも、本当はかれの人生と何の関係もない。それなのに、その人生に耳を傾け、かれの表情の小さな揺らぎを、椅子に座る姿勢からこぼれてくる時間を、立って歩く姿を目の前に見る。知らない演奏者たちがピアノに向き合い、美しい演奏を残して去るのを見る。

 舞台上にいるかれは、観客席にいるわたしたちを見ることができない。次々にあらわれ、思い出の曲を弾く人たちを見ることがない。背後に映る自身の幼年期、青年時代の写真を、わたしたちは見るが、かれだけは見られない。

 76年を生きる中で、職業生活や社会的な出来事もあったはずだが、ほとんど語られない。ピアノの演奏者が誰で、どんな人生の中で今日あらわれたのかもわからない。観客も含め、それぞれが長い時間を生きてきて、ほとんど偶然に今ここに集い、少しだけかかわりあう。舞台上のドキュメンタリーを消費することではなく、わたしたちがそこにともにいることが演劇なのだ。いくつもの長い時間が、限定的なかたちで、ほんのつかのま、劇場に集まる。本当は何も関係がなく、限定的だからこそ、一瞬の美しさを見たり、さみしさや、おかしさを感じたり、家族や友人ではない誰か、何かとともに生きることを思う時間が生まれる。

 20歳のときのかれは、「おれの将来はこれからどうなるだろう?」と思っていたという。わたしたちの将来は、これから55年後、どうなっているだろう。時間の中で、何が残り、どうふりかえることができるだろう。舞台上に再現される時間と、わたしの時間、あなたの時間が少しだけかさなる。『ムーンライト』は、ある一人の人の生きてきた時間を、音楽とともに、音楽をつうじて語りなおすことで、人間関係や、社会の変化とは少し別の場所で、これまでとこれから、そして今に思いを寄せる、一度限りの時間を広げてくれるだろう。

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