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2018/11/07

ドキュントメント『Changes』レビュー (佐々木敦)

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文/佐々木敦

  範宙遊泳山本卓卓初監督映画、ドキュントメント、あとはタイトルしか知り得ない状態で試写を観たのだが、いかにも卓くんらしい作品になっていて、とても良かった。冒頭のシーン、劇場の楽屋口前の坂道を主演女優が歩いてきた時から、なぜか胸が熱くなった。彼女が範宙遊泳を辞めていたことを私はこの映画で知ったが、素の彼女(という言い方はもちろんナイーヴ過ぎる、ということはすぐ後で述べる)の姿に、彼女が範宙で演じてきた幾つもの印象的な役柄が重なって見えた。ドキュントメントはドキュメントなので、どうして山本卓卓がこんな映画を撮ろうと思い立ったのかは映画の中で触れられている。だがドキュントメントにはフィクションの要素もある。それは範宙の演劇を観たことがある者であれば、最初の方のオーディション再現場面ですぐさまあからさまにされる。もちろんそれは映画の中でも「再現場面」として演じられているのだが、むしろすぐ特定可能な俳優をわざと使うことで、これはドキュメントではあるが、それ以外の/それ以上の何かでもあるということを、卓卓監督は観客に示そうとしたのだと考えるべきだと思う。ということはつまり、主演女優とともにほぼ出ずっぱりの彼は、いわば主演男優なのであり、彼が映画の中で言うことすることは、現実そのままとは違っている可能性があるということだ。同様に、主演女優も「素の彼女」そのものであるわけはない。ならばこれは結局、フェイクドキュメンタリーなどと呼ばれるフィクションなのか。そうでもない。全部が本当でもなければ、全部が虚構でもない。そしてそれらを腑分けすることは観客である私たちには出来ない。いや、観客でなくても、彼女にも彼にも出来ない。それがドキュントメントの意味であり、というか「演劇」の意味である。だから山本卓卓はこれまでやってきたことの延長線上で、これを撮ったのだと思う。ある時から急速にせり上がってきた、社会的少数者へのほとんど無条件の共感、その人たちを「少数」たらしめる「社会」へのほとんど無防備な反感、それはこの映画にも漲っている。映画の中で主演女優は或るミッションを遂行中であり、それが映画の中の嘘なのか映画の外の真実なのかはどうでもよく。私は次に田中美希恵を舞台で観るのが今から待ち遠しい、いや、少し怖くもある。

 

佐々木敦

批評家。HEADZ主宰。ゲンロン批評再生塾主任講師。早稲田大学非常勤講師。立教大学兼任講師。 著書多数。
http://www.faderbyheadz.com
https://twitter.com/sasakiatsush

ドキュントメント『Changes(チェンジズ)』

監督・撮影・編集 山本卓卓
日程 11月13日(火)19:30・11月14日(水)13:00/17:00
会場 あうるすぽっと
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