三浦康嗣(□□□)、近藤良平による『F/Tモブ・スペシャル』がスタート。モブならではのアクシデントも!? 

テキスト:CINRA.NET編集部

大勢のストリートミュージシャンによるカオスが、池袋周辺で頻発する!?



池袋西口公園には、普段からさまざまな人が集まっている。ベンチに腰掛けておしゃべりするカップルや、喫煙所でタバコを吸いながら休憩するサラリーマン、たくさんのストリートミュージシャンやパフォーマーが集まるスポットとしても有名だ。『フェスティバル/トーキョー13』のオープニングとなった11月9日も、公園にはたくさんのストリートミュージシャンが集まり、自らの思いの丈を演奏にぶつけていた。

しかし、なんだか雰囲気がいつもと違う……。周囲をよくよく見回してみると、何か狂ったような内容の詞を歌うフォークデュオ、頭を振り乱すだけのダンサーが加わったパンクバンド、ブルーシートを広げてウクレレを奏でる集団、トランペットを1人で吹き続ける男性、そんな人たちが数メートルおきに点在している……。さらには太極拳の練習をする集団まで……さすがにちょっと、これは多すぎるんじゃないか!?

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(c) Ryosuke Kikuchi

実は彼らはフラッシュモブイベント『F/Tモブ・スペシャル』の三浦康嗣(□□□)チームに参加する人々。その開始時間と場所を聞きつけ公園にやってきたのだが、あまりにも普段の池袋西口公園とシームレスな状況だったため、本物と仕込みの境目がよくわからなくなってしまったのだ。

しかし、モブ開始時間になると、それまでのカオス的状況が一変。公園のスピーカーから時報の音が流れ、それまで思い思いの曲を演奏していたストリートミュージシャンたちが、時報のリズムにあわせて演奏を行い始める。うっすら聴こえてくるコード進行は、□□□の名曲”0:00:00”だ。

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(c) Ryosuke Kikuchi

といっても、全体としてカッチリと統一された楽曲ではなく、テンポやコード進行だけを共有しながら緩くつながっているような演奏だ。もしかしたら、その場に出くわしながらも、何かが行われていたことにすら気づいていない人もいたかもしれない、ささやかなモブだ。三浦によれば「今日はそれぞれの音が小さすぎたため、お互いのバンドの音が聴こえなくて演奏を見失ってしまった」という状態だったようだが、実験の成果には満足気な様子。そのアクシデントすらも、三浦や参加者たちは楽しんでいるようだった。今後は改良が加えられ、モブとしての完成度にもさらに磨きがかかっていくだろう。

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(c) Ryosuke Kikuchi

J-WAVEとも連動した”ライディーン”モブの行方は?



一方、コンドルズ・近藤良平が振付を行ったチームでもアクシデントが勃発。以前のレポートの通り、近藤チームでは、YMOの名曲”ライディーン”をバックにフラッシュモブが行われる。しかも、J-WAVEのラジオ番組と連動し、ラジオから流れる音源で踊ってしまおうという前代未聞の企画だ。開始時刻になると、J-WAVEを流していた池袋西口公園のスピーカーからは、予定通り”ライディーン”が流れ、突如踊り始める150人の参加者たち。遭遇してしまった周囲の人々は驚いたり、思わず笑ってしまったり、カメラを取り出したりと、さまざまなリアクションを見せる。

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(c) Miyu Terasawa

アクシデントが起こったのは、”ライディーン”が流れ始めてしばらくたった頃。ラジオの電波の問題か、スピーカーの配線の問題か、途中で音がブツブツ途切れてしまう事態に……。すぐにまた復旧するものの、その後もアクシデントは続き、2〜3秒の空白時間が断続的に発生してしまったのだ。

しかし、その事態を察知した参加者は、誰からともなく「♪て~て~て~」と”ライディーン”のメロディーを歌い始める。もちろん、近藤からの指示ではない。150人によるダンスパフォーマンスを想定していたフラッシュモブとともに、”ライディーン”のメロディーをハミングする光景が自然発生的に広がったのだ。これには、近藤も「最高でした!」と手放しで絶賛していた。

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(c) Miyu Terasawa

週末の池袋で「想定外の事態」を楽しもう



予告もなく、突然街中で開催されるフラッシュモブは、本来、街にとって「アクシデント」のようなもの。しかし、そのアクシデント性こそが、遭遇した人たちを非日常世界へと誘い、また楽しませてくれるのだ。だからこそ、ふだん劇場内で行われる公演のように、隅々まで想定通りに進行することはまずないし、つつがなく進行しすぎても面白くない。あらゆる状況が想定される「街」という環境で、「想定外の事態」に対してどのように対応し、それをどのように楽しめるのかは、フラッシュモブの参加者にとっても、偶然居合わせた観客にとっても1つの醍醐味とも言えるだろう。

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近藤良平のモブでは、見よう見まねで飛び入りで参加する学生の姿も!

アクシデントが起こっても、落ち込んだり気に病んだりすることなく、参加者たちはあっけらかんとした笑顔を見せていた。そして、その笑顔に引きつけられるかのように、一緒になって手拍子を叩いたり、歌ったり踊ってみたりする人々も続出。いったい誰が観客で、誰が参加者なのか、そんな区別すら曖昧なカオス空間が池袋の街に出現していた。12月8日の『F/T13』閉幕まで、このフラッシュモブは週末、池袋各所で行なわれている。もちろん無料で楽しめるこのイベント、気になった人はこのサイトでチェックしてみてはいかがだろうか。

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