Takuji(青柳拓次 / LITTLE CREATURES)らが音楽で表現する『100% トーキョー』

テキスト:CINRA.NET編集部

異彩を放つ現代演劇作品と、豪華な音楽家たちとのコラボレート



数ある個性的な『F/T13』の主催演目の中でも、リミニ・プロトコルの『100% トーキョー』は、とりわけ異彩を放つ作品だ。舞台に登場するのは、東京で実際に生活をしている一般人が100人(しかも、演劇未経験者限定)。東京の人口統計、構成比に基づいて集められた100人の老若男女は、一人ひとりが東京の1%を表しており、そんな100人が舞台上で次々と繰り出される質問に回答することで、東京の「現在」を浮き上がらせていく。さながら「東京がもし100人の村だったら……」といった趣向の作品だ。

そして今回、この作品に音楽制作で関わっているのが、LITTLE CREATURESなどの活躍で知られるTakuji(青柳拓次)率いる新バンド「焚火」。青柳をはじめ、民謡歌手の木津茂理、島唄の大島保克、さらにアン・サリー、ピアノに世武裕子、ドラムは千住宗臣、そして塩谷博之(サックス)、小林眞樹(ベース)が加わった8人編成のバンドだ。11月9日(土)に行われた、『F/T13オープニング・イベント』では、「焚火」からTakuji、木津、大島の三人が参加したフリーライブも開催された。いったい「焚火」は、リミニ・プロトコルの舞台にどのような音楽を与えてくれるのだろうか? Takujiに話を聞いた。

「『100% トーキョー』のように、全く違うジャンルの人々が共同作業を行うという世界は、僕にとって理想的な空間でもあります」



ーTakujiさんは、普段から舞台作品を観られることはありますか?

Takuji:そんなにたくさんの作品を観るほうではありません。知り合いの舞台に行ったり、外国を旅行したときに、美術館などとあわせて観に行くくらいですね。小劇団の舞台や、コメディー作品、ミュージカルなんかを観に行ったことがあります。

ーでは、今回リミニ・プロトコルの作品の話を聞いて、だいぶ戸惑われたのではないでしょうか? 普通「演劇」と聞いて思い浮かぶような俳優の演技や台詞がある舞台作品ではありません。

Takuji:そうですね。僕が知っている数少ない演劇とは大きく違いました。どちらかと言うと、実験的な現代アートに近いものがあります。ただ、お話をいただいて、ベルリンやメルボルン、ケルンで行われた「100%シリーズ」の映像を見たのですが、とても楽しむことができました。

01_100%ケルン

ー現在、どのような作業を進められているのでしょうか?

Takuji:今はまだ、作り始めの状態。このシーンではこんな音楽が欲しいという、演出家のダニエル・ヴェッツェルからのオーダーと、「東京を表す音楽」というコンセプトをもとにデモ音源を作っている段階です。

ー「東京を表す音楽」というニュアンスは、さまざまな意味の解釈ができますね。Takujiさんはこの言葉をどのように受け止めたのでしょうか?

Takuji:東京は世界的に見ても、多種多様な音楽が集まっている都市であり、いろいろな地方からも多くの人が集まる場所。そんな東京という都市の背景を利用して、土台は都会的でありながら、日本の端から端までの音楽のエッセンスを混ぜあわせる方法をイメージしています。だけど、おそらく上演を観る人の多くは東京在住の人。日常的に東京で流行っている音楽をそのまま演奏しても現状報告のようになってしまう。その意味では、東京の日常性からは少し離れた新しい音楽を考えています。

ー『100% トーキョー』も、出演する人々は一般人ですが、舞台としては精密に構成された作品です。その意味でも、Takujiさんの仰られた「日常性から少し離れた」新しい音楽というのは、リミニの考えにも近いように感じますね。

Takuji:僕から見ると『100% トーキョー』のように、全く違うジャンルの人々が共同作業を行うという世界は、理想的な空間でもあります。これだけ細分化が進んだ社会で、垣根を取り壊しフラットになることはなかなか難しい作業です。僕も、音楽を作るときに、世界中の音楽がフラットに並んだ状態からどれをチョイスして融合させるかというスタンスでやっているところがあります。その意味でもこの作品には共感しますし、不思議な感動を覚えました。

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Takuji

「『焚火』のバンドメンバーの皆さんは、一緒にやれること自体が自分にとって大きな喜びです。後ろの方で演奏しながら、メンバーの粋な演奏が、演劇とリンクする瞬間を楽しみたいですね(笑)」



ー今回の作品のために編成されたバンド「焚火」についても伺いたいと思います。メンバーは、Takujiさん以外に、木津茂理さん、大島保克さん、アン・サリーさんの歌があり、演奏は世武裕子さんのピアノ、小林眞樹さんのベース、千住宗臣さんのドラム、塩谷博之さんのサックスが務めるという、非常に豪華なメンバーです。

Takuji:歌の三人には「日本を表現してほしい」と思って、お願いしました。大島さんは石垣島の人ですし、木津さんは民謡の家系で育った方なので、ピュアな民謡の世界を表現できる歌い手。アン(・サリー)ちゃんは、声が好きというのもあるんですが、在日韓国人3世というアイデンティティも持っています。東京にもさまざまなアイデンティティの人々が暮らしているので、そのルーツも今回お願いした理由の1つですね。また、演奏の部分では、先ほど話した、東京の「都会的な部分」を表現したかったので、個人的にも好きな演奏者の方々にお願いしました。今回のバンドメンバーの皆さんは、一緒にやれること自体が自分にとって大きな喜びです。後ろの方で演奏しながら、メンバーの粋な演奏が、演劇とリンクする瞬間を楽しみたいですね(笑)。

ー舞台作品に対して、音楽をどのように関わらせたいと思っていますか?

Takuji:リミニのコンセプトを踏まえながらも、100人の出演者が少しリラックスできるような音楽にしたいです。日本人は開放的な気質ではないので、きっと参加者も舞台上ではガチガチに緊張してしまうはず。そんな緊張を緩めるように、身体を揺らせるような音楽を演奏できればと考えています。

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ー11月9日(土)の『F/Tオープニング・イベント』では、焚火からTakujiさん、木津さん、大島さんが参加したフリーライブも行われましたね。『F/T』のお客さんだけでなく、幅広い年齢層の方がステージ前に集まって、楽しまれていたのが印象的でした。あのとき演奏された曲は、どのようなものだったんですか?

Takuji:本番で演奏する曲は出来なかったのですが、東京出身の自分が今住んでいるヤンバル(沖縄北部地域の山原)の曲、東京・八丈島の民謡、東京をベースに活動されている大島さんのオリジナル曲などをトリオで演奏しました。途中から少しづつお客さんも緩んできて、最後に演奏した木津さんの十八番“東京音頭”では、池袋のローカルな人たちを巻き込んで賑やかに締めくくりました。

ーTakujiさんとしては、『100% トーキョー』をどのような作品にしたいですか?

Takuji:この作品は、温もりがある作品だと思います。一般の方々が舞台に登場することで、こういう人が自分の生きている街で生活しているということを、観客も心から実感できるんです。普段、生活していると、人間関係はどうしても仕事場や友達などの範囲に限られてしまうもの。けれども、舞台上で人々が質問に答えたり、人生を語ることを通じて、東京の中にある見えないつながりをダイレクトに感じられるのではないでしょうか。

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