F/T テアトロテークみどころ解説1『家族会議』

テアトロテーク作品をディレクター相馬がプレ解説!第一弾は...

A 「家族会議」クリストフ・マルターラー / サラ・デレンティンガー
『家族会議』は、同名の舞台の制作過程を追ったドキュメンタリーです。

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2009年に製作されたばかりで、最新のマルターラー作品の魅力が盛りだくさんに詰まっています。

この作品が上演されたのは、スイス湖畔にある「グランド・ホテル」。R.シュトラウス、アインシュタイン、シャガールなどの著名人が滞在した高級ホテルで、ホテル開業100年を記念して、お祝いにマルターラーが新作を捧げたという、なんとも豪華極まる設定。サロン、体育館、ロビー・・・ホテル中が舞台と化し、文学や音楽の引用を通じかつての宿泊客が蘇ります。

このドキュメンタリーでは、初日までの6日間に密着しながら、マルターラーの創作に迫ります。語り手は、この作品にマルターラー作品の常連俳優、ユルク・キーンベルガー。何を隠そう、彼の両親がこのホテルの持ち主だそう(!!)。そのキーンベルガー氏は、怪我で欠番し、ベットの上からマルターラーとの思い出、そして子供時代のホテルの思い出を語る・・・という切り口です。

マルターラー作品といえば、とにかく個性的な俳優の緻密で絶妙な演技を見るのも楽しみのひとつなのですが、その演技は、その俳優が自ら考え、演技する自主性にゆだねる、というマルターラーの「放任演出」から来ているようです。俳優の自主性からこれまでにない演技、表現を深めようとするマルターラーに対して、役者たちは「稽古場ではストレスがないことがストレス」と言っているのが非常に興味深いですね。

日本語字幕はスイス大使館の協力で提供して頂きました。すばらしいクオリティのドキュメンタリー&字幕です。マルターラー『巨大なるブッツバッハ村』をご覧になる前に、ぜひとも、ご覧下さい!


F/Tテアトロテークのページ

解説2弾『そのヨーロッパ人をやっつけろ!』
解説3弾『アリアーヌ・ムヌーシュキン:太陽劇団の冒険』
解説4弾『外国人よ、出ていけ!』
解説5弾『浜辺のアインシュタイン』