作品について

庭劇団ペニノの“イメージの演劇”

2007年『笑顔の砦』、08年『星影のJr.』と、劇団公演で発表した戯曲が二年連続で岸田國士戯曲賞最終候補にノミネート、外部演出では古典戯曲と真正面から向き合う精巧で質の高い演出成果を挙げ、劇作家・演出家として近年多彩な実力を発揮するタニノクロウ。フェスティバル/トーキョー初参加となる今回は、タニノの幻想を具現化する集団、庭劇団ペニノによる新作公演となる。
庭劇団ペニノの“イメージの演劇”では、現実には存在することのない奇想の数々=タニノの妄想が分断されたイメージとして観客に届けられる。「人は勝手に関連性を持って頭でつなげてしまうもの。そのこと自体が人間としての自由、そして権利だ」とタニノは語る。さまざまな仕掛けとたくらみをもって、劇場空間全体を巧妙に構築する。
タニノのあふれるイマジネーションと観客自身の想像力とがからまり合うとき、観る者は脳内の構成物を書き換えられたかのような感覚に襲われ、舞台上の幻想は圧倒的に“リアルなもの”として浮かび上がってくるに違いない。

にしすがも創造舎の空間だからこそ享受できるペニノの真髄

演出・美術・照明・音響のほぼ全ての要素をタニノ自身が担い、自宅マンションを公演ごとに改造したアトリエはこぶねでの公演や新宿の高層ビル群に囲まれた空き地に奥行50mにもなる巨大テントを設置しての野外公演など、タニノクロウの理想は公演ごとに「劇場を作る」ところにある。従って、劇場のブラックボックスに合わせて作品をつくるという形態ではない「非劇場」での公演活動を積極的に行う。また、せりふのない生活音だけで成立させた『Mrs.p.p.overeem』やジャズの生演奏と混乱する手術シーンを並行させ、恐怖と笑いを巻き起こした『アンダーグラウンド』など、既存の「演劇」を軽々と突き破る「非定型」の作品づくりも庭劇団ペニノの特徴だ。
今回の公演では、にしすがも創造舎の通常の客席パターンを全て取り払い、タニノのイメージ世界を具現化するための空間作りを一から行う。体育館という広大な空間を手に入れたタニノクロウの非凡な脳内世界を、全身で体感できる絶好の機会となるだろう。

演出ノート タニノクロウ

このフェスティバルに参加するに値する、十分な作品を作りたいと思っています。
同時に、多くの方に楽しんでいただけるような作品を作りたいと思っています。
今回の作品は、ずっとあたためて、いつか実現させたいと思っていた作品です。
タイトルは「太陽と下着の見える町」です。
女性の下着が見えるさまを舞台芸術にすることが主な目的ですが、物語のあるダイナミックな作品になると思います。(私の下着に対する愛情をすべて出すこと)
つまり、この作品は究極のパンチラを求めるスペクタクルです。
そして、この作品は大人のための巨大絵本です。
参加できて光栄です。