【クルーレポート3】ポストパフォーマンストーク 松井周×タニノクロウ

『あの人の世界』(サンプル)
ポスト・パフォーマンストーク

11月12日 木曜日  東京芸術劇場小ホール1にて
松井周×タニノクロウ(庭劇団ペニノ)

真剣な演劇談義になるのかと思いきや、和やかな雰囲気の中、激しい演劇フリークでなくとも楽しめるトークでした。

松井さん、タニノさんお二人が斜めになった舞台に席を並べ、まずは作品の着想、きっかけなどからお話は始まりました。タニノさんも今回の舞台を鑑賞してご自分と近い世界観を感じたそうです。

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タニノ「この作品の着想の原点は?」という問いに

松井「ふと、墓参りに行くときに皆何を感じてどう想像しているのかなってまず思ったんですね。それは人それぞれ空から見ているイメージだったり暗い土の中のイメージだったり。そこから広げて、では生きてる人に対してはみんなどういうイメージ、レッテルを付けてるのかって。向き合ってる人でも「あの人」としていろんなイメージが重なっていく、そんな感じですね。」


とても興味深かったのがお二人の作品制作過程のお話でした。


タニノさんは「まずはどこでやるかが重要で、それに合わせたり、条件をのんだりってことだけど、劇場じゃないときには独裁的にすすめたりもしますね」というのに対し、松井さんは「僕の場合、劇場前提で考えることが多く、美術家の意見を聞くことが多い。自分がというより、周りがどう思うか?など自分じゃない力に動かされたい、自分が主体じゃないところに興味がありますね。」

というお答えでした。斜めの舞台も俳優さんたちが自身の意志で動くのとは別に負担がかかることででてくる予定調和を壊すような動きをねらっていたようです。観ている間は気づきませんでしたが、たしかにあの斜面がいい具合に遠近感や演者さんの動きに影響を与えていたように思います。

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セットについて

上下2層に分かれているセットに関して松井さんは「上は日常で、下は宝塚のイメージでした。何をしてもいいような、砂漠であったり、墓でもあり。具体性のあるものは置かないで解釈もなくしました。」とのこと。確かに上では具体的、現実的な会話がある一方で下ははっきりした解釈はつけ難く、かつやりとりも動物園状態でほんとにカオス!けれども要所要所で松井さんのユーモアセンスが光り、松井さんにとってのエンターテイメントへの意識が感じられました。

松井さん「僕個人としては下のところはミュージカルのキャッツのような感じなんですが・・・」(客席一同「えっ?」という空気)

タニノ「・・・うーん・・・それはぁどうですかねえ?(笑)」
客席(笑)

キャッツが本気かどうかは気になるところでしたが、一観客としては動物というモチーフが出てくるところが非常に面白かったです。作品の中で動物の役になりきっていくら動物の皮をかぶっても下には人の皮があるという場面がありましたが、私はそこですごく、人は一人であってもそこかしこ、場面場面で色々な皮を被ることで身を守ったり、誇示したりする器用なようで面倒な知恵を授かった動物なのだなぁとしみじみ感じました。

広報クルーH