【クルーレポート】ポストパフォーマンストーク 黒田育世×笠井叡

11月17日(火)に『花は流れて時は固まる』(BATIK)のポスト・パフォーマンストークが行われました。

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黒田育世×笠井叡(舞踏家)

お二人はF/T09春の参加作品である『another BATIK〜バビロンの丘に行く〜』にて黒田さんが出演、笠井さんが振付という形で共演されています。
実は、会うのがそれ以来というお二人。トークの一部をさっそくレポートいたします。

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まずは笠井さんの感想から。
笠井さんは今作『花は流れて時は固まる』のDVD(2004年の初演時のもの)をご覧になったそうですが、実際に劇場で観た感想は「DVDとは構成が変わっていて釘付けになった」とのこと。
さらに「自分がダンスを創る方法とまったく違う印象を受けた。どうやって作品をつくっているのかわからない」ともおっしゃっていました。
どうやって作品ができるのか、それは笠井さんでなくとも気になるところです。
ここから、作品ができるまでという話題に移りました。
「振付から作品が進行していく笠井さんとはまったく手順が違うかもしれません。私の場合は、状況からつくっていきます。まず、この状況がないと身体が切羽詰まらないという状況を作ってから、振付をして、作品が出来上がっていく、そういう創りかたをしています。」と黒田さん。
また、「ストイックにダンス作品を創らなくてもいいかな、と思うようになってきた。ダンスに見えるかどうかはあまり問題じゃない」とも。
ダンス作品とひとことで言い表せないBATIKの作品の背景にはこのような考え方があったのか、と思いました。

『花は流れて時は固まる』は2004年に初演され、今回F/T09秋での上演にあたり大幅な再構築(リ・クリエーション)が行われました。
話題は作品を作りなおす大変さはなにか、という話に。
再構築とは何かという問いに黒田さんはこう答えてらっしゃいました。
「過去に燃え尽きたものに、もう一度情熱を燃やして嘘にならない状態にしなくてはいけない。思い出してできることではない。」
初演時には「まだ、いける」、ヴェネツィア・ヴィエンナーレでの公演時(2007年)には「もっと、いける」と感じたそうですが、今回再構築をやってみて「もうやりたくない」と思ったそうです。

最後に質疑応答の時間を少しとったところ、お客様から質問が出ました。
せっかくなのでご紹介します。
Q:普段は何を食べているのですか。
「食べたい物をありがたいと思いながら食べています。なんでも食べます。」
Q:作品を拝見して、「追い詰められる」ということが印象に残ったのですが、
黒田さんご自身はいつも何かに追い詰められているのですか。
「何かに追い詰められているというわけではないけれど、『あ、命だ。』と言えるくらいシンプルで、キラキラしたかたまりを舞台に置けたらいいな、と思っていて、そのひとつの方法が身体を追い詰めるということだと思っています。」
貴重なお話を聞くことができました。

BATIKの公演は上演が終わりましたが、F/T09秋は今後も見逃せない演目ばかりです。ぜひ劇場で作品を体感してみてください!