Hey Girl!
作品について Hey Girl! 演出:ロメオ・カステルッチ(ソチエタス・ラファエロ・サンツィオ)

今回来日する『Hey Girl !』は、象徴演劇ともいうべきカステルッチの演劇世界の特色が色濃く映し出された代表作といえる。
霧に包まれた何もない舞台に、一人の少女が「脱皮」し誕生する。「ヘイ・ガール!」 –とっさに女性を呼びとめるこのセリフの対象は、彼女であると同時に、聖母マリアであり、ジュリエットであり、ジャンヌ・ダルクであり、あるいは名もなき無数の女たちである。一人の少女の心象-「少女」から「女」への通過期におとずれる不安や葛藤、その超越―は、歴史的・文化的記号の中に反射され、そのイリュージョンは完璧な美しさゆえにある種の不気味さをたたえている。
カステルッチの演劇に、明確な物語はない。ただ寓話的な、あるいは歴史や絵画から引用された記号や身振りが舞台を支配し、その強烈な残像は見る者の網膜に焼き付いて離れない。