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Mail Interview
メールインタビュー


回答者:久野敦子(公益財団法人セゾン文化財団常務理事)

フェスティバル/トーキョーのこれまでの取り組みについて、また今後のフェスティバルの在り方について、専門家の皆さんにメールインタビューを行いました。

――あなたが考えるフェスティバル/トーキョー(F/T)の成果と、 今後、東京のフェスティバルに期待することについて教えてください。

フェスティバル/トーキョー(F/T)という舞台芸術の出会いの場が誕生したことで様々な変化が起きました。2009年からのF/Tの変遷は、そのまま社会における変遷を映しだす鏡であったように思います。以下に箇条書きします。

社会における舞台芸術フェスティバルの意義、認知度、重要性が高まった。
演劇の概念を拡げ、表現の可能性の幅が広がった。

通常ではなかなか見ること、知ることのできない文化圏の作品に触れ知見を深める場となり、日本以外の地域の同時代演劇について意識する場となった。日本の舞台芸術への海外からの関心を呼ぶきっかけとなり、国際交流および共同事業が活発化した。

とくに、アジア地域の人材育成およびネットワーク拡充の場となった。

国際舞台芸術フェスティバルの重要性が、文化政策の中で認知されていく経緯において、行政からの支援、実施運営の方法などについて様々な問題提議がなされ論議の場となった。

優秀な人材を育成し、全国レベルで輩出した。

様々なメディアで、過去の業績に触れることのできるアーカイブを残していることは、F/Tが一旦終了するとしても、DNAとして引き継がれることになる。

一鑑賞者としても、目から鱗の作品群、新しい知見に触れることができ、自身の生活が豊かになるとともにより深い思考力を獲得できるようになったと思っています。また、芸術支援の仕事に従事していますが、仕事の上でも大きな刺激を受け影響を感じています。


「東京」という場所で開催されるフェスティバルに期待することは、以下の事柄です。

かつて大型フェスティバルが実施される目的は、戦後復興であったり政治的な分断を乗り越えるため異文化交流の場であったりした。
これからのフェスティバルは、中小規模であっても、様々な課題を持つ人々が自ら連携して立ち上げる「集まり」のようなものになって来るのかもしれない。そのような活動で良識をもって社会との繋がりを促進する仕組みを東京都が先行して実施、他地域に広がっていくことを期待する。

――F/Tで一番印象残った取り組みと、その理由を教えてください。


開始当初の一連のヨーロッパの最新作品の紹介。自分自身の演劇の概念が拡張された。


――F/Tの中で予想外の成果・発見はありましたか? あった場合、それはどのようなものですか?


作品の内容から運営方法まで、あらゆる意味でチャレンジングなフェスティバルだったからこそ、後進にとって多くの学びがあった。様々な優秀な人材が、全国各地の重要なポジションで仕事を継続している。 初代プログラム・ディレクターが、テアターデアヴェルトのディレクターに選出されたことは、F/Tでの経験に負うところが大きいと思う。



公益財団法人セゾン文化財団常務理事。多目的スペースの演劇・舞踊のプログラム・コーディネーターを経て、1992 年に財団法人セゾン文化財団に入団。2018 年より現職。現代演劇、舞踊を対象分野にした助成プログラムの立案、運営のほか、自主製作事業の企画、運営などを担当。公益財団法人横浜市芸術文化振興財団理事。神奈川県文化芸術振興審議会委員。

久野敦子