『Toky Toki Saru(トキトキサル)』
コンセプト・演出:ピチェ・クランチェン
9月30日(土)・10月1日(日)
会場南池袋公園
※観客席はありません。芝生の上で、ご自由にご鑑賞いただけます。
日程9/30 (土) 17:00-18:30
10/1 (日) 13:00-14:30
※雨天決行、荒天中止
天候に関わらず、〔9/30(土):14時〕/〔10/1(日)10時〕に、実施の可否をF/T公式HPにて発表いたします。ただし、それ以降に主催者の判断により変更になる場合もございます。
上演時間90分
料金入場無料・予約不要
お願い当日は記録・広報用に写真、並びに動画撮影をいたします。撮影素材は報告書や公式HPのほか、広く広報活動に使用させていただきます。また、報道社による写真や動画撮影の可能性もございます。予めご了解いただけますよう、よろしくお願いいたします。
当日パンフレット 当日パンフレット(PDF)


ポップでキッチュ、自由なサルたちとめぐる「トーキョー」

 タイの仮面舞踊の哲学をコンテンポラリー・ダンスに落とし込んだ作品で、世界的に活躍するダンサー、振付家のピチェ・クランチェン。フェスティバル/トーキョー17のオープニングプログラムでもある本作は、彼が現代の東京にインスパイアされ、生み出した新作野外パフォーマンスだ。
 数週間の東京滞在を経て見出されたキーワードは「Body」と「Mind」。消費文化の中で培養され、去勢された身体、精神を、機敏かつ順応性に富む「サル」たちを媒介に解放し、そこから生まれるあらたなエネルギー、創造力をこの都市に注ぎ込む。
 タイ、インドネシア、カンボジア、香港、日本のダンサーに、20名の一般参加者を加えた出演者は総勢40名。彼らが上野、秋葉原など都内の風景をイメージソースとしたカラフルな衣装を身にまとい踊る光景は、それだけで明るくエネルギッシュだ。ヒップホップやストリートダンスの要素を交えた振付、芝に覆われた会場も、開放感に満ちた時間を演出するにちがいない。

 

ディレクターズ・ノート

人間のさまざまな物語、かつて起きたできごとと、これから起きるできごと。
これまで生まれて、これから生まれる信仰、想像力、思考。

『Toky Toki Saru』は、わたしたち自身の心への認識に、わたしたちを導く。惑わない心、無垢な心へ。ただひとつの真実へ。身体、思考、感情、感覚。これらはいずれも、わたしたち自身ではないのだ。

わたしたちは、演者から観客に変わらなければいけない。わたしたちの目の前で生成する真実を見つめ、身体の内部に存在するわたしたちを見つめよう。わたしたち自身の心に到達し、わたしたち自身の心を見極めるために。(ピチェ・クランチェン)

 

関連企画


F/Tトーク『Toky Toki Saru』ラウンジトーク

登壇者:ピチェ・クランチェン ほか

F/T17オープニング作品として、ピチェ・クランチェンが新たに創作した『Toky Toki Saru』。東京でのリサーチ、バンコクと東京で行われたクリエイションなど、作品製作のプロセスを紹介します。

会場レストランセゾン(東池袋 1-30-7 ホテルグランドシティB1)
日程10/1(日)17:30~
入場料500円(予約優先)
言語タイ語、英語(日本語逐次通訳つき)
所要時間120分(予定)
※受付開始・開場は開始の30分前



ムービー

  • 本番映像(9月30日)撮影:Takashi Fujikawa (Alloposidae)
  • ピチェ・クランチェン メッセージ動画
  • 過去作品動画

フォトギャラリー

F/T17『Toky Toki Saru』記録写真 Photo:Takashi Fujikawa (Alloposidae)

アーティスト・プロフィール

ピチェ・クランチェン

ダンサー・振付家

タイ古典仮面舞踊劇コーンの名優チャイヨット・クンマネーのもとで16歳より訓練を開始。バンコクのチュラロンコン大学で芸術・応用美術の学士号を取得後、舞台芸術を探究してきた。北米、アジア、ヨーロッパの各地でさまざまな舞台芸術プロジェクトに参加。フランス政府から芸術文化勲章シュバリエ(2012)、アジアン・カルチュラル・カウンシルからジョン・D・ロックフェラー三世賞(14) を受賞。近年では、『Dancing with Death』(16)『Black and White』(15) などが日本で上演されている。本作では、コンセプト・演出という立場から創作に挑む。

稽古場レポート

タイでの稽古に参加した各国のダンサー・アーティストたちからレポートが届きました。

●パドゥン・チュムパン(振付・ダンサー/タイ)

 わたしの名前はパドゥン・チュムパンです。ピチェ・クランチェンダンスカンパニーのダンサーです。
 『Toky Toki Saru(トキトキサル)』は、香港、インドネシア、カンボジア、タイから来た4名の振付家のコラボレーションによる作品です。そしてその振付家たちが、ピチェ・クランチェンによって演出されていきます。この作品は日本(フェスティバル/トーキョー)において上演されます。わたしにとって、海外の振付家と共にダンスのスタイルを創造していくのは初めてのことです。ダンサー全員が「サル」のパフォーマンスを稽古していたということに、わたしはとても興奮しました。クリエーションのプロセスにおいては、参加メンバーのそれぞれが、ダンスにおける共通点と相違点をどのように見せていくかという点で、それぞれの技術を発揮するだろうと思います。今作のクリエーションに参加することは、わたしにとって最高の経験になるでしょう。

●アリサ・スライマン(振付・ダンサー/インドネシア)
 私は、このように素晴らしいダンサー・振付家たちとともにクリエーションをおこなうことができて、とても興奮しています。海外のアーティストとコラボレーションをするのは今回が初めてなので、このプロジェクトに参加するすべての人々から、ダンスの世界についてもっと多くのことを学びたいです。私は、今回のプロジェクトのコンセプトが、きわめてユニークなものであると感じています。精神と身体についての非常にシンプルなアイディアが、どのように観衆と関係をもちうるのでしょうか?動き、シーン、ステージング、音楽、衣装のすべてが、日本的な感性と共にまとめられているので、この作品は、日本に住むすべての人々と容易に関係を築くことができると思います。
 私は、ピチェが、私や他の振付家たちと共にクリエーションをおこなう方法に関心をもっています。ピチェはこのプロジェクトにおけるアイディアやコンセプトへの動機付けと説明を常に欠かしません。それぞれの振付家は異なる方法論をもっています。それゆえ今回の経験は、ダンサーとしての私だけでなく、振付家としての私も駆り立ててくれるものになっています。また私は、日本のダンサーたちとコラボレーションすることにも関心をもっています。「アニマル・ポップ」というスタイルを、どうやって他のダンサーたちと共有できるのでしょうか?このように、異文化の人々となにかを共有する機会がもてるのは、実に素晴らしいことだと感じています。
 私にとっての課題は、衣装です。今回のプロジェクトでは、ダンサーたちが「サル」のマスクをつけますが、私のダンスは、とても素早い動きを伴うスタイルのものです。マスクのサイズが大きすぎると、素早い動きをすることが難しくなってしまう可能性があります。もう一つ、音楽を担当するローリーの感性やその視点が、ピチェのものとは非常に異なるように感じています。

●ジャネット・ウー(振付・ダンサー/香港)
 香港演芸学院を卒業し、芸術の世界で活動を始めて5年になります。異なる国々の人々とコラボレーションするのは、いつでも興味深いことです。どんなときでもわたしを感動させてくれる彼らの文化を学び、それを経験することができるからです。タイのリハーサル・スタジオの環境はとても美しく、心地よいものでした。木々、竹、鳥の声に囲まれて、時には犬がスタジオにやってきて、わたしたちのクリエーションに参加してくれました。リハーサルのあいだ、自然の音に包まれていて、そういった空間は香港ではほとんどありえないことでした。普段、わたしたちは工場地帯でリハーサルをおこなっています。それはつまり、わたしたちが騒音と汚染された空気に囲まれた、狭い空間でリハーサルをしなければいけないということです。とはいえわたしは、どちらの状況におけるクリエーションも楽しんでいます。わたしたちは互いに異なる外部因子をもっているが、その内なる心は、みな「芸術(アート)」と呼ばれる尊いもののために動いているのです。
 わたしたちのクリエーションチームは、タイ、インドネシア、オーストラリア、カンボジア、香港、日本からのメンバーで構成されている。彼らから学ぶことはあまりに多いし、彼らと共に経験できることもあまりに多いです。日本に赴き、すべてのダンサー、出演者たちとクリエーションに入るのが待ちきれないです。進歩と、汗と、時間を一緒に楽しもう!

●ニエット・ラディー(振付・ダンサー/カンボジア)
 わたしは、古典仮面舞踊の踊り手であり、コンテンポラリーダンサーでもあります。カンボジアの代表として、今回のクリエーションでは「サル」を演じます。ピチェとのクリエーションは、興味深いものです。というのもわたしは、この作品を気に入っているし、コラボレーションの作業を好んでいるからです。クリエーションの発展を理解するのは、そこまで難しくはないでしょう。ただ彼のアイディアに従うというよりも、それを観察して進めていこうと考えています。わたしたちがこの作品に対して、互いにどのような理解をしているのか気づけたことで、クリエーションのプロセスは非常にスムーズなものになりました。彼が、東京という都市と、わたしたちとは異なる人々の日常の空気を、どのように表象するのか知れたことも貴重でした。
 わたしは「モンキー・マインド(サルの精神)」というコンセプトを興味深く思っています。というのも、身体と精神は、世界中のあらゆる人々にとって、その現実的な部分で接続しているものだからです。わたしたちの精神は、時に理解することが難しくもあります。感情が表れて、身体を支配してしまうからです。この作品は、外側から見てみれば、商業的で楽しげなものに見えるでしょう。しかしその内側には、なにか暗示するものがあります。わたしの振付についていえば、もっと楽しげで、幸福そうなものに変化させていく必要があるでしょう。与えられた役割に沿ったものになるよう、その動きを変化させ続けていこうと考えています。この作品は、わたしがわたし自身をどのようにコントロールしていくかということを考える手助けもしてくれるでしょう。

●ローリー・ブレイカーモラント(DJ/オーストラリア)
 わたしはオーストラリアのメルボルン出身で、現在はバンコク在住の音楽プロデューサー、DJです。今回の『Toky Toki Saru(トキトキサル)』では音楽監督を務めます。上演中にあなたが耳にする音楽や音風景は、すべてわたしが作曲、編曲したものです。上演中に、それらの音楽のライブ演奏もおこないます。
 舞台芸術作品をクリエーションするプロセスにおいて、こういった側面で関わるのは初めての経験です。ピチェとコラボレーションするのも初めてでした。 芸術的なアウトプットとクリエーションという点でいえば、わたしは今回のコラボレーションの環境を楽しんでいます。環境の一部分一部分の総和よりも、全体として生まれるものほうが常に優れたものになると、わたしは信じています。そして、それが最高のものになるように、ピチェはとても大切にこの作品を育てています。
 ワークショップで即興的に作品を書いていくプロセスの中で、わたしは自分の役割とその機能を要求される、という責任を負うことに対して勇気づけられ、また、そうすることを許されたように感じました。アイディアが自由に湧き出て、自分の音楽をどのように応用するかという広域の探求をおこなえたし、それらをどうミックスするか、試みることができました。
 自分がもともと作ったオリジナルの音楽をダンサーたちが解釈していくのを見て、わたしは強い絆と、畏敬と感謝を覚えました。9月末の南池袋公園に向かう旅路の出発点となる、忘れがたい体験でした。

●ピヤポン・ポントーン(衣装/タイ)
 わたしは今、「FLYNOWIII(フライナウスリー)」と呼ばれる、ファンタジックで非現実な装いのファッションブランドでヘッド・デザイナーを務めています。わたしの作品の多くはミクスト・メディアとでも呼べるような傾向をもっていて、色、パターン、テキスタイル、形、サイズ、そしてもちろん素材のそれぞれに遊びの要素が散りばめられています。わたしたちのブランドは、デザインにおける明確な境界線を引かずにいます。むしろ、わたしたちの物語と、核となる哲学を重視し、その周囲で自由に遊んでいるのです。
 わたしがこのブランドで仕事を始めて10年以上になります。ピチェ・クランチェンダンスカンパニーとのコラボレーションに参加するようになったのは、5年ほど前のことです。それから、わたしたちは多くのプロジェクトでコラボレーションを続けてきました。『Black and White』の女性キャラクターや、『Tam Kai』、『Nay Nai』、そして、現在世界ツアー中の『Dancing with Death』でも。
 現在わたしは『Toky Toki Saru(トキトキサル)』の衣裳デザイナーとしてクリエーションに参加しています。ピチェの作品で、さまざまな素材を用いて遊び、愉快な想像力を働かせる機会を再び得ることができました。今回のように、海外からの多くのダンサーたちとのプロダクションに参加するのは、挑戦的なことです。それに、東京の新しい側面を学び、国際的なチームと環境の中でクリエーションに臨むのは、魅力的でもあります。わたしにとっては、すべてが新しく、良い経験であり、楽しく思えているし、フェスティバル/トーキョーに参加できることにもわくわくしています。クリエーションの全貌が見えてくるのを待ちわびています。

稽古の様子

キャスト/スタッフ

   
コンセプト・演出ピチェ・クランチェン
振付・出演(Mind)パドゥン・チュムパン、アリサ・スライマン、ジャネット・ウー、ラディー・ニエット 
出演(Mind)伊藤沙希、岩城かのこ、大手可奈、小山衣美、京極朋彦、久保佳絵、小山柚香、佐藤有華、鈴木奈菜、鈴木春香、 鶴家一仁、田路紅瑠美、都丸明子、ながやこうた、福岡まな実、松尾 望
出演(Body)赤星 満、石原聖菜、石原由香里、泉 葉子、市川喜愛瑠、小川琴末、北原恵美、倉垣まどか、小関靖幸、後藤大地、後藤剛範、小林理樹、小松茉奈実、高橋聡生、田口恵介、立本夏海、華 みき、樋浦悠真、増田雄吾、真弘、米川幸リオン
音楽・DJローリー・ブレイカーモラント
  
衣裳ピヤポン・ポントーン 
衣裳助手コンカーン・ルンサワン、チュラーラック・エークワタナパン
舞台ウォーラワン・タロートスック
照明三浦あさ子
音響相川 晶 (有限会社サウンドウィーズ)
技術監督寅川英司
技術監督助手河野千鶴
舞台監督横川奈保子
演出部金子裕明、小野寺栞、小山内ひかり
照明コーディネート木下尚己(株式会社ファクター)
美術コーディネート中村友美
衣装コーディネート藤林さくら
大道具東宝舞台
設営三和舞台
通訳・翻訳岩澤孝子、福冨 渉
宣伝美術鈴木哲生
記録写真・記録映像シリワン・パックメイ、藤川琢史、宮澤響
制作武田侑子、十万亜紀子 (フェスティバル/トーキョー)
制作助手小森あや (株式会社TASKO)、菅井新菜
インターン井上渚、呉芳園、小林礼乃、野本ひとみ
  
共催国際交流基金アジアセンター
協力公益財団法人セゾン文化財団、クリエイティブ・アート実行委員会(Integrated Dance Company 響-Kyo)
日・タイ修好130周年記念事業
主催フェスティバル/トーキョー

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