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ジゼル・ヴィエンヌ
インタビュー

ジゼル・ヴィエンヌ ロングインタビュー 聞き手:岩城京子(ジャーナリスト)2010年7月11日 アヴィニヨン

----この秋、初めて東京で作品を上演されます。あなたのことを知らない観客も日本にはまだいますので、まずは基本的な経歴からお話を伺わせてください。あなたは演出家として非常にユニークな経歴をお持ちですね。大学では演劇ではなく哲学を専攻され、その後、フランス国立高等人形劇芸術学院で学ばれます。なぜこのような進路を選ばれたのでしょう。

ジゼル・ヴィエンヌ(以下GV)  私は若いころから非常に多くのことに情熱をそそいできました。文学、哲学、音楽、ヴィジュアルアート......ほかにもありますが、主だったものはこれらです。そしていつも私は、文学と音楽とヴィジュアルアートを融合する最適な手段は人形劇だと思いつづけてきました。別に子供のころから人形劇をたくさん見ていたわけではありません。ただ私自身が、そのような人形劇を作れると漠然と信じてきたのです。それで国立高等人形劇芸術学院への進学を志したわけですが、まさか合格するとは思いませんでした。それまでの私は、ヴィジュアルアーティストである母の影響でハンス・ベルメールやアネット・メサジェなどの創作人形に触れていたとはいえ、大学ではまったく関係のない学や音楽を勉強していたわけですからね。でも運良くこの教育機関に受け入れられ、私は初めて本格的に演劇や人形劇を学ぶことになりました。
なかでも当時見た淡路人形座の文楽にはとても感銘を受けました。私がその頃から試みようとしていた、テキストと音楽とムーヴメントの相互性が、そこではすでに洗練されたかたちで完成されていたからです。

ジセル・ヴィエンヌ
演出家・振付家・舞台美術家  1976年生まれ、グルノーブルとパリに在住。大学で哲学を専攻した後、フランス国立高等人形劇芸術学院で学ぶ。1999年卒業後、振付家/演出家/パフォーマー/ヴィジュアル・アーティストとしての活動を開始。特にパフォーマンスとヴィジュアル・アートの融合、横断的表現を目指して、自作の人形を用いた舞台作品を精力的に創作。ヨーロッパを中心に注目を集める。いずれの作品でもハイパーリアルな人形の圧倒的な存在感を放っている。一方で2005年以降の自作の人形等を対象にした写真家としての活動も目覚しい。その他、雑誌編集や映画出演など、多岐に渡る活動を行っている。