富士見市民文化会館 キラリふじみ『颱風(たいふう)奇譚 태풍기담』

ソン・ギウン(作)×多田淳之介(演出)
11月26日(木)~ 11月29日(日)
会場 東京芸術劇場 シアターイースト
日程 11/26(木)19:00
11/27(金)15:00★
11/28(土)13:00/18:00★
11/29(日)13:00
ポスト・パフォーマンストークあり
11/27(金)15:00の回 多田淳之介×岡田利規
11/28(土)18:00の回 ソン・ギウン×多田淳之介×島 次郎(『颱風奇譚 태풍기담』美術)
※受付開始は開演の1時間前、開場は30分前
上演時間 2時間(休憩なし・予定)
上演言語 日本語・韓国語(日本語・韓国語字幕あり)
チケット 一般前売
自由席(整理番号つき)4,000円(当日+500円)
ペア(1枚あたり) ¥3,600
5演目セット ¥3,200
3演目セット ¥3,400
学生 ※当日券共通。当日受付で要学生証提 ¥2,600
高校生以下
※当日券共通。当日受付で要学生証または年齢確認可能な証明書の提示
¥1,000
Typhoon's Tale

Typhoon's  Tale Pamphlet当日パンフレット(PDF)

【プレイガイド】東京芸術劇場ボックスオフィス     チケットぴあ[Pコード:561-086]  カンフェティ

颱風の後に残るのは――。日韓の名コンビが挑む新版『テンペスト』

 ポップかつ緻密な演出で、古典から自作のパフォーマンスまで、幅広い作品を手がける演出家、多田淳之介と、細やかな感情表現が光る劇作で知られ、日本との演劇交流にも積極的に関わる、韓国の劇団「第12言語演劇スタジオ」の主宰、ソン・ギウン。チェーホフの『かもめ』を日本統治時代の朝鮮を舞台に翻案し、2013年の東亜演劇賞を受賞した『가모메 カルメギ』の名コンビが、シェイクスピア晩年の傑作『テンペスト』を下敷きにした新作に挑む。
 時は20世紀初頭、国を追われた王族イ・スンは、南シナ海に浮かぶ孤島で王国の再建を夢見ている。ある日、自分を追いやった甥のイ・ミョンと日本の政治家たちの一行が近くを航行すると知ったイ・スンは、島の妖精に命じて颱風を起こし、彼らを島へとおびき寄せるのだが――。シェイクスピアが遺した和解と再生の物語に、日韓の歴史と文化が重なり、私たちの現在を照らし出す。

あらすじ

時は20世紀初頭。国を追われた朝鮮の老王族イ・スンは、南シナ海に浮かぶ小島で王国の再建を夢見ながら暮らしている。ある日、自分を追いやった勢力の一人、甥のイ・ミョンと日本の政治家や軍人の一行が船で近くを通りかかると知ったイ・スンは、島に棲む空気の精に命じて、颱風を巻き起し、一行を自分のもとへとおびき寄せる。ところが、自らの秘術で創りだす幻影の劇で彼らを懲らしめるうちに、事態は思わぬ方向に進みだし、やがて彼は自身が歴史の表舞台から退場する日が迫っていることを知る…。

フォトギャラリー

『颱風奇譚』(c)Namsan Arts Center (撮影: Gang Mool Lee)

『颱風奇譚』イメージ写真 (c)Namsan Arts Center (撮影: Gang Mool Lee)

アーティスト・プロフィール

Kiwoong Sung

ソン・ギウン Kiwoong Sung

劇作家、演出家、第12言語演劇スタジオ主宰

1974年生まれ。2006年から本格的に劇作、演出活動を開始。慣習的な感情表現から脱皮した繊細で緻密な作品作りで注目を集める。いわゆる植民地支配下のソウルを微視的に描く一連の作品や平田オリザの「科学」シリーズの翻訳・演出作品などを発表。大韓民国演劇大賞優秀作品賞、ドゥサン・ヨンガン芸術賞(公演芸術部門)、今日の若者芸術家賞(演劇部門)などを受賞。1999年に交換留学生として来日して日本語を学んだことをきっかけに、平田オリザ、野田秀樹、多田淳之介など、日韓現代演劇の交流や共同制作、日本の現代戯曲の翻訳にも携わるようになった。多田淳之介演出の『가모메 カルメギ』(2013)の脚本では、アントン・チェーホフ原作の『かもめ』を1930年代の朝鮮を舞台にした2カ国語(日本語と朝鮮語)が混ざり合う戯曲に翻案し、近作『新・冒険王』(2015)では、平田オリザとの共同脚本・演出を務めた。

Junnosuke Tada

多田淳之介 Junnosuke Tada

演出家、俳優、富土見市民文化会館 キラリふじみ芸術監督、東京デスロック主宰

1976年生まれ、千葉県柏市出身。2010年4月より富士見市民文化会館 キラリふじみ芸術監督に就任。俳優の身体、観客、劇場空間を含めた、現前=現象にフォーカスした演出を特徴とし、古典から現代劇、パフォーマンス作品まで幅広く手がける。「演劇LOVE」を公言し、地域、教育機関でのアウトリーチ活動も積極的に行い、韓国、フランスでの公演、共同製作など国内外問わず活動する。俳優としても他劇団への客演や、映画、TVドラマにも出演。ソン・ギウンのプロデュース日韓共同製作として『재/생( 『再/生 日韓ver.』)』(2011)、『세 사람 있어!(3人いる!)』(2012)等を演出。2013年、日韓共同製作作品『가모메 カルメギ』で、韓国の演劇賞「第50回東亜演劇賞」を受賞。
F/T Books アーティスト選書

キャスト/スタッフ

ソン・ギウン
演出多田淳之介
出演チョン・ドンファン、チョン・スジ、パク・サンジョン、佐山和泉、小田豊、永井秀樹、山崎皓司、大石将弘、夏目慎也、ペク・ジョンスン、マ・ドゥヨン、チョ・アラ、伊東歌織
美術島 次郎
舞台監督ク・ボングァン
照明岩城 保
音楽・音響チョン・ヘス
ドラマトゥルクマ・ジョンファ
演出協力ミン・セロム
演出助手チョン・ヒョン
翻訳石川樹里
通訳・制作アシスタントキム・ジョンミン 
美術コーディネーター・小道具ユ・ヨンボン
衣装キム・ジョン
メイクチャン・キョンソク
プロデューサー松井憲太郎(富士見市民文化会館 キラリふじみ)、コ・ジュヨン
制作矢野哲史(富士見市民文化会館 キラリふじみ)
   
東京公演
技術監督寅川英司
舞台監督佐藤 豪
演出部壺阪英理佳
音響コーディネート相川 晶(有限会社サウンドウィーズ)
制作砂川史織、喜友名織江(フェスティバル/トーキョー)
   
共同製作富士見市民文化会館 キラリふじみ、第12言語演劇スタジオ、南山芸術センター(ソウル)、安山アートセンター(安山市)
共催独立行政法人国際交流基金、公益財団法人キラリ財団
主催フェスティバル/トーキョー

翻訳記事(インタビュー)1
出典:文化日報(2015.09.08)
http://m.munhwa.com/mnews/view.html?no=2015090801032612056001#_adtep (原文)

歴史は嘆きではなく、現在を眺める窓

軍国主義の1920年代、今の日本と類似
日韓修好50周年···韓国人脚本·日本人演出の演劇『颱風奇譚 태풍기담』


日韓修好50周年、韓国人脚本、日本人演出による演劇が日韓両国で上演される。歴史の束縛から解放された日韓の若手演劇人二人が共同制作した『颱風奇譚』のことだ。シェイクスピアの『テンペスト』を原作にしたこの作品は、第12言語演劇スタジオのソン·ギウン(41歳)が脚本、彼と2013年に共同制作した演劇作品『가모메 カルメギ』で外国人としては初めて韓国で東亜演劇賞を受賞した、東京デスロックの多田淳之介(39歳)が演出する。安山文化財団とソウル文化財団が共同開催する第22回BeSeTo演劇祭の招待作品として10月16日安山で初演。続いて同月24日南山芸術センターで上演され、日本公演を行う。このお二人と大学路でお会いし、お話を伺った。

脚本 ソン·ギウン


— 『昭和10年、我らが青春』『小説家仇甫氏の一日』など、1930年代を背景とした作品が多いですね。
今回は1920年代です。特にその時期に愛着を持つ理由はあるのでしょうか。


日本による植民地支配時代は、いわば近代と呼ばれるものが始まった時期だと思います。現在の我々の社会におけるあらゆる問題の根源が、その時期に形成されたということでしょう。私が生まれ育った1970~80年代の全体主義的文化も、1930年代 の雰囲気とあまり変わらないし···だから興味が湧いてくるのですが、一言ではきっぱりと言い切れません。

— 舞台で歴史(日韓では主に過去の歴史と置き換えられる)を扱うことには、どんな意味があるのでしょうか。

演劇は、過去の時代を復古したり再現したりすることには適さないジャンルです。それらには、むしろ映像メディアの方が向いています。演劇が歴史を扱う意味は、歴史を現在の問題につなげるという側面にあるのだと思います。

― 原作になったシェイクスピアの『テンペスト』は、和解と許し、再生というメッセージを含んでいます。
『颱風奇譚』もやはり日韓関係における和解をテーマにした内容なのでしょうか。


日韓の関係には、むやみに和解と許しというには難しい点が多いです。幸いなことに、『テンペスト』にはファンタジー的な要素が多くあります。歴史を緻密に再現する作品ではありません。
『颱風奇譚』もやはり自由な想像力から書き下ろしてきました。ただ、結論が一番敏感なものなので、未だに何度も直しています。

—日韓の演劇人二人が一緒に作る作品ということ、それは日韓関係の未来像を提示しているのでしょうか。

舞台で歴史を扱うからといって、(韓国側の)植民地支配されたことについての嘆きになっては困ります。誰が勝ったとか負けたとか、そういった歴史認識には限界がある。そこから離れて、当時の帝国主義や植民地主義が作用した原理や論理などがどうやって生まれたものなのか、追求してみたかったのです。片側からみた植民地支配時代ではなく、韓国を植民地に追い込んだ日本国内の談論を顧みる必要があるだろうと思いました。すでに知っていることを再生産しても、意味がありませんから。

—多田淳之介さんとの共同制作はこれで二度目となります。仕事を通じてお互いに影響し合っていますか。

多田さんは、日本で社会的な発言もしたりするし、実験的な演劇を志向する演出家です。基本的な趣向が自分と似ていて、共同制作を通じて、二人とも芸術作品の社会的な責任についてさらに悩んだりしていました。

演出 多田淳之介


— 韓国人にとって1920年代は、日本による植民地支配時代として認識されています。
日本人にとって、その時期はどのような感じなのでしょうか。


実際のところ、日本人は明確なイメージを持っていません。学校であまり教えない時期でもありますし。ただ日本の軍国主義が始まり、戦争の準備をしていた時代であるというくらいの認識です。演出家として、また個人的に、日韓の関係や歴史に興味を持っています。1920年代の軍国主義化した日本は、今現在の雰囲気にも似ている側面がありますし…。

— 『颱風奇譚』は、日韓両国で上演されます。1920年代についてのイメージが相反している日本と韓国の観客が同じ演劇を観るのは興味深いことですね。

2013年にアントン・チェーホフの『かもめ』を脚色した『가모메 カルメギ』も、ソン·ギウンさんと共同制作をして日韓両国で好評を得ました。その時には、1930年代と2010年代をリアリズムで繋げようとしました。韓国の観客の中には、客観的に扱われる歴史に気を悪くしたとおっしゃる方もいましたが、日本の観客からは、日本による植民地支配を扱った物語を観て、当時の歴史が初めてわかった、という反応が多くありました。『颱風奇譚』は、『가모메 カルメギ』とは若干雰囲気が異なります。歴史を題材としてはいますが、リアリズムよりはファンタジーに近い。原作の最後でプロスペローは、魔法も夢も諦めてしまいます。観客は、日韓両国がどのような「夢」を見なければならないのか、悩むことになると思います。

— その夢とは、平和な日韓関係、未来志向的な歴史を意味するのでしょうか。

まだ4幕の最後の章が未完成なので、確証はできません(笑)。でも、私たちはいつも未来志向的な演劇を作ろうとしてきました。今回もそうなるのではないでしょうか。大事なのは、その「未来」が、1920年代の彼らが見た未来だということです。 果たして我々は、当時の人々が夢見た未来に住んでいるのか···そういった問いを投げかける作品なのです。

— 韓国の演劇人との交流や共同制作に興味を持ったきっかけは何ですか。

2008年、アジア演出家ワークショップで、ソン·ギウンさんに初めて会いました。韓国人の役者たちとの仕事がとても楽しかったんです。単なる日韓交流とは全く違う次元において。特に、東アジアを舞台に、支配する側とされる側の物語を舞台に上げるというのは、日韓の私たちだけがなし得ることではないかと思います。演劇史的にも、世界的にも価値のあることなのです。

翻訳記事(インタビュー)2
出典:ニュース1(2015.04.24.)
http://m.news1.kr/news/category/?detail&2198793 (原文)

日韓の演劇人が共に語る歴史『颱風奇譚 태풍기담』

演劇『颱風奇譚』は、日本と韓国の演劇人が一緒につくった作品。第12言語演劇スタジオのソン·ギウン(41歳) が脚本を書き、東亜演劇賞初の外国人受賞者となった、東京デスロックの多田淳之介(39歳)が演出を担当する。

二人は2013年、演劇『가모메 カルメギ』における共同作業で、第50回東亜演劇賞3部門を受賞。新作『颱風奇譚』はシェイクスピアの原作『テンペスト』を脚色し、日本と韓国の不幸な歴史を若い世代の視線で顧みる演劇だ。 本作は、韓国独立70周年を迎える今年10月24日に上演される。初めての制作会議を終えたソン·ギウンと多田淳之介に、先月21日、大学路ソウル演劇センターでお話をうかがった。


— 『颱風奇譚』の内容を教えてください。

ソン·ギウン:原作の『テンペスト』では、都市国家であるミラノとナポリの間で戦争が起こり、両国の人々を乗せた船が台風で難破し、無人島に漂着したことから物語が始まります。『颱風奇譚』では、原作の設定を1920年代の韓国と日本に変え、舞台になった無人島は、東南アジアの離れ島にしました。

— お二人はいつから一緒にお仕事をされているのですか?

ソン·ギウン:多田さんが2009年に客員演出として参加してからです。本格的に一緒に作品を作ったのは、2013年の 『가모메 カルメギ』でした。原作となったのはロシアのアントン·チェーホフによる戯曲で、モスクワに住んでいる作家がキエフの田舎で経験する事件を扱った物語です。私たちの『가모메 カルメギ』は、原作の内容を日本による植民地統治時代である 1930年代として、東京在住の作家が韓国の田舎へ戻るという設定に変更しました。

― 二人の演劇的相違点は何でしょう。

ソン·ギウン:私がアントン·チェーホフのようにリアリティを志向するとすれば、多田さんはシェイクスピアのように自由な想像力を求める方ですね。『颱風奇譚』では、演出を担当した多田さんの自由な想像力が、より明確に現れるでしょう。

— 韓国独立70周年と、日韓国交正常化50周年を迎える2015年に、『颱風奇譚』が持つ意味とは何だと思いますか。

多田淳之介:私たちは、歴史問題を演劇で解決するつもりはありません。演劇は人間について考える芸術であり、 何を素材にするとしても、作品そのものに意義がなければなりません。ただ、日韓関係などに置きかえて翻案すれば、観客にとってはより身近に感じられるのも事実です。

ソン·ギウン:『颱風奇譚』は、韓国独立70周年を念頭に入れて制作した作品です。歴史理解における知識や視点が異なる日韓の観客の前で上演するということに意味があります。『颱風奇譚』は、韓国での初演後すぐ日本でも上演される予定です。

— 日韓両国の観客を対象にすることに対しての負担などはありますか。

多田淳之介:両国の観客の知識と背景が違うことが難点です。日本の観客は、過去の歴史をあまりにも知りません。
『가모메 カルメギ』を日本で上演した時にも、日本人は歴史についてしっかりと勉強した方がいい、という反応がありました。

ソン·ギウン:日韓関係が歴史問題で悪化した時期なので緊張しますね。『颱風奇譚』を見る日韓の反応も違います。韓国の観客は歴史について詳しすぎて、演劇そのものを楽しめないのではないかと心配になります。また、『颱風奇譚』が、日本による植民地時代の歴史を歪曲するのではないかという不安や懸念の目で見られるかもしれない。

— 役者に求める演技が独特でしたが、どのような演出的アプローチなのですか。

多田淳之介:感情に没入する演技には懐疑的なんです。私は、しぐさと、音声として出る言語台詞を区分してからアプローチします。まず、言語を使わずしぐさだけで相手の反応を誘導する。そのあとに台詞を加える。例えば、仲のいい二人が舞台に登場したとします。一般的な演劇では、二人の台詞としぐさで親近感を表現しようとすると思います。私の演出的アプローチでは、仲良く会話はするけれど、しぐさでは気まずい感情を表すしぐさを求めます。そうすることで、なじみが無いながらも、深みのある感情表現が可能となるのです。

— 日本と韓国の役者の違いといえば。

多田淳之介:国民性に焦点を当てると、日韓の役者の違いが明らかになります。日本の俳優は、感情を隠す演技に向いている一方、韓国の俳優は、感情を表に出すことが得意です。

— 日本は東日本大震災を、韓国はフェリー転覆事故という災難を経験しました。このような現実の中で、芸術に何ができると思いますか。

多田淳之介:2012年に福島の震災を題材とした演劇を、日本国内8か所で上演したことがあります。被災地から遠くなるほど、痛みを一緒に共有するという意識が薄れていることに衝撃を受けました。同じ日本人なのに遠く感じられました。現在日本では、経済的論理から原発を再稼働しようとする動きがあります。また、その動きを自分とは無縁なことだと感じている国民がいるのです。

2014年12月に、ペンモク港と安山檀園高校を訪ねました。セウォル号の遺族が集まるヒーリングセンターも訪ね、いろいろなお話を伺いましたが、福島の状況に似ていると思いました。特に、政府に対する不信感。両国ともに、自分たちが人々から忘れられることを恐れていたのです。彼らのために、演劇にできることがある、そう思いました。私は日本人ですが、セウォル号の遺族の方々を助けたいという気持ちを強く持ちました。
全ての芸術は、ある事件を想起させ、象徴的に凝縮します。いい作品とは、絶対に忘れられないイメージなのです。2015年5月、安山ストリートアーツフェスティバルにて『安山巡礼道』という、安山を巡礼するプロジェクトに参加する予定です。