アジアシリーズ vol.2 ミャンマー特集『ラウンドアバウト・イン・ヤンゴン』

[Aプログラム]ティーモーナイン(パフォーマンス、インスタレーション、映像作品) ニャンリンテッ(演劇作品)
[Bプログラム]ターソー(音楽ライブ)
11月13日(金)~ 11月15日(日)
会場 アサヒ・アートスクエア
日程 11/13(金)15:00【A】★/19:30【B】
11/14(土)15:00【A】 /19:30【B】
11/15(日)15:00【A】★
★ポスト・パフォーマンストークあり
※受付開始は開演の1時間前、開場は30分前
【A】 ティーモーナイン
(パフォーマンス、インスタレーション、映像作品)
ニャンリンテッ(演劇作品)
■上演時間:1時間15分(休憩あり・予定)
■上演言語:ミャンマー語(日本語・英語解説あり)
【B】 ターソー(音楽ライブ)
■上演時間:1時間(休憩なし・予定)
チケット 自由席(整理番号つき) 当日+500円
一般前売 【A】¥2,000【B】¥2,500【セット】¥4,000
ペア(1枚あたり) 【A】¥1,800【B】¥2,250
5演目セット 【A】¥1,600【B】¥2,000【セット】¥3,200
3演目セット 【A】¥1,700【B】¥2,200【セット】¥3,400
学生※1 【A】¥1,300【B】¥1,600【セット】¥2,600
高校生以下※2¥1,000
※1 当日券共通。当日受付で要学生証提示
※2 当日券共通。当日受付で要学生証または年齢確認可能な証明書の提示
Roundabout in Yangon

Roundabout in Yangon Pamphlet当日パンフレット(PDF)

【プレイガイド】 東京芸術劇場ボックスオフィス     チケットぴあ[Pコード:【A】561-090 【B】561-091]    カンフェティ

  • Zombie Opera撮影:片岡陽太
  • Zombie Opera撮影:片岡陽太
  • Zombie Opera撮影:片岡陽太
  • Zombie Opera撮影:片岡陽太

3人のアーティストが体現する、変化の時、不変のアイデンティティ

 2011年の文民政権の発足を機に民主化の進むミャンマー。表現規制の緩和やインターネットの普及など、アートをめぐる環境も大きく変わりつつある。今回のアジアシリーズでは、ミャンマーの現代アートシーンを代表する3人のアーティストを招聘、三者三様の表現から、ミャンマーの「いま」を探り出す。
 映画『The Monk』で世界的な評価を得たティーモーナインは、自らの詩をもとにインスタレーションや映像作品を制作するアーティスト。マルチメディア作品が主流の現代ミャンマーのアートの中でも「詩」は、重要なキーワード。今回は作品の展示に加え、関連のパフォーマンスも上演する。
 演劇の分野で独自路線を行くのは、現代社会を風刺したメッセージ性の強い演劇作品を上演するニャンリンテッ。寺院の祭で上演される音楽劇「ザッポエ」が主流のミャンマーにあって、オリジナル作品に加え、ヨーロッパの戯曲を自ら翻訳上演するなど、画期的な活動を続ける彼とその劇団Theatre of the Disturbedは、現代ミャンマー演劇の始祖といえるかもしれない。
 そして、音楽シーンにおいて、伝統と現代文化の融合を試みるのがターソー。宗教儀礼などで使われる打楽器群「サインワイン」が奏でる伝統音楽をミックスしたクラブミュージックを制作する彼が、伝統舞踊のダンサーをしたがえ、展開するライブパフォーマンスに期待が高まる。
 会場の構成は、数寄屋大工としての経験に加え、ミャンマーの伝統産業とのかかわりも持つ建築家・美術家の佐野文彦が担当、文化的アイデンティティを共有しつつ、異なる道を進んでいくアーティストたちの「ラウンドアバウト」(環状交差点)を演出する。

アジアシリーズとは?

 アジア地域から毎年1カ国を選定し、その国にフォーカスした特集を組む「アジアシリーズ」。綿密なリサーチを通して得た歴史や文化的背景に関する知識を踏まえ、現地で活躍するアーティストの表現活動を紹介するほか、アーティストとの対話等を通じ、アートシーン全体の現状を把握、多様な言語、文化、身体のあり方を前提とした、継続性のある交流を行なう。初年度のF/T14では韓国を特集。本年はミャンマーの多様な表現をヤンゴンでよく見られる環状交差点(ラウンドアバウト)になぞらえたプログラムを送る。今後はマレーシアに焦点をあてたリサーチ、企画も予定されている。

★ポスト・パフォーマンストーク ゲスト

(1)11/13(金)15:00の回(公演終了後 16:15頃から)「ミャンマーの映画シーン」
登壇者:ティーモーナイン×清 恵子(キュレーター、メディア・アクティビスト、著述家)

(2)11/15(日)15:00の回 (公演終了後 16:15頃から)「ミャンマーの演劇シーン」
登壇者:ニャンリンテッ×久野敦子(公益財団法人セゾン文化財団 プログラム・ディレクター)



詳細

(1)「ミャンマーの映画シーン」
ミャンマー国内外で注目を集める映画監督であるティーモーナイン氏と、ミャンマーと長きに渡って交流を持ち、映画祭を立ち上げた清恵子氏によるポスト・パフォーマンストーク。映画シーンを掘り下げることで、様々な表現媒体を使いこなすミャンマーのアーティストの素顔を導き出す。

清 恵子 Keiko Sei (キュレーター、メディア・アクティビスト、著述家)
1988 年から東欧で共産主義国家のメディア状況を研究しながら、東欧各地でメディアやアートを使った民主活動を行った。東欧の民主化後も欧州で政治とアートとメディアの問題を取り入れた斬新なプロジェクトのキュレーションを次々と打ち出した。2002年に活動を東南アジアに移し、ミャンマーとタイを中心に研究と活動を続けている。オーストリアの Springerin 誌特派員、ドクメンタ 12 マガジン・プロジェクトおよびドクメンタ・マガジン編集委員。チェコやドイツで教鞭をとる他、執筆物多数。軍事政権下のミャンマーでは映画教育と映画祭を立ち上げた。



(2)「ミャンマーの演劇シーン」
ミャンマー現代演劇界の先端を行くニャンリンテッと、アジアのパフォーミングアーツシーンに精通し、実際にミャンマーを訪れたセゾン文化財団の久野敦子によるポスト・パフォーマンストーク。パフォーマンスアートが主流のミャンマーにおいて“演劇”という分野を選択した彼の意図を紐解いていく。

久野敦子 Atsuko Hisano(公益財団法人セゾン文化財団 プログラム・ディレクター)
多目的スペースの演劇・舞踊のプログラム・コーディネーターを経て、’92年に財団法人セゾン文化財団に入団。’96年より現職。現代演劇、舞踊を対象分野にした助成プログラムの立案、運営のほか、自主製作事業の企画、運営を担当。舞台芸術のための新たなインフラ開発、才能発掘、育成に関する支援策を考えている。2014年フェスティバル/トーキョーの招きでミャンマー・ヤンゴン訪問。2003年ニャンリンテッが学生時代に参加した国際共同制作『HN-ヘンナは宇宙人を愛してから5年間生理が来ない!』(スパイラルホール)を目撃している。

アーティスト・プロフィール

The Maw Naing

ティーモーナイン The Maw Naing

映画監督、詩人、パフォーマー

1971年生まれ。ビルマ文学とITを研究する傍ら、Yangon Film SchoolとプラハのFAMU(プラハ芸術アカデミー映像学部)で映画製作を学ぶ。2004年、初めての詩集を発表。詩をもとにしたインスタレーションやパフォーマンス、映画『Again and Again』(2008)も手がける。長編ドキュメンタリー映画『ナルギス – 時間が止まった時』(2009)は数々の国際映画祭で上映されている。また、長編フィクション映画デビュー作となった『The Monk』(2014)は、シンガポール国際映画祭やロッテルダム映画祭に出品されるなど、世界的に注目を集めている。NIPAF(2009)、福岡アジアトリエンナーレ(2014)にも出品している。


Nyan Lin Htet

ニャンリンテッ Nyan Lin Htet

Theatre of the Disturbed主宰、演出家、パフォーマー

ミャンマーとフランスを拠点に活動。2000年代初頭にパフォーマンスアート作品を製作し、その後、キタムラアラタが演出をつとめる劇団「Annees Folles」にて演劇の訓練をうける。以後、今日に至るまで、積極的に世界のパフォーマンスアートや演劇シーンに携わっている。2005年にヤンゴンに拠点を置く「Theatre of the Disturbed」を設立してからはシェイクスピア、ベケット、イヨネスコ、カフカなどを翻案した作品で、演出も手掛けている。


Thxa Soe

ターソー Thxa Soe

ミュージシャン、ラッパー、エレクトロ・ヒップホップ・プロデューサー

1980年生まれ。中学生の頃から音楽を始め、高校卒業後、アンダーグラウンド・ヒップホップシーンと関わるようになり、数々のグループでアルバムを発表。2001年よりロンドンにあるSAE Instituteでオーディオ・エンジニアリングを学びながら、ミャンマー音楽についての研究も始める。2004年に帰国し、2006年よりミャンマーの伝統音楽をミックスしたエレクトロミュージックの創作を始め、ファーストソロアルバムをリリースする。2015年までに7枚のソロアルバムを発表。

ミャンマー基礎知識トークセッション

日程: 11/3(火・祝)16:00~18:00 ※受付開始・開場は30分前
会場: ホテルグランドシティ レストランセゾン
東京都豊島区東池袋1-30-7 池袋東口より徒歩5分
登壇者: 田村克己(総合研究大学院大学理事、国立民族学博物館名誉教授)
五十嵐理奈(福岡アジア美術館 学芸員)
料金: 500円(予約優先、ソフトドリンクつき)

近年の民主化政策により、多くの外資系企業が参入するなど、急速な変化を遂げつつあるミャンマー。F/Tはそんな激動の時代を生きるミャンマーのアーティストに注目をし、アジアシリーズvol.2としてミャンマーを特集する。
この講座では、ミャンマーの政治や歴史、文化に精通している文化人類学者の田村克己と、ミャンマーを含め東南アジアのアートに関する調査を続けている福岡アジア美術館の学芸員、五十嵐理奈のトークセッションを開催する。社会的な文脈や課題のみならず、人形劇やザッポエといったミャンマーの伝統芸能、そして東南アジアから見たミャンマーアートに触れることで「ミャンマーアートのいま」を考察できる特別な講演となる。

tamura

田村克己 Katsumi Tamura

総合研究大学院大学理事、国立民族学博物館名誉教授

東京大学大学院社会学研究科文化人類学専攻修士課程修了後、鹿児島大学、金沢大学、国立民族学博物館などにて、研究教育にあたる。ビルマ(ミャンマー)を中心に東南アジア大陸部や中国南部などで、文化人類学の調査を行う。主著書に『レッスンなきシナリオ』(風響社)、共編著に『暮らしがわかるアジア読本ビルマ』(河出書房新社)、『ミャンマーを知るための60章』(明石書店)などがある。


igarashi rina

五十嵐理奈 Rina Igarashi

福岡アジア美術館 学芸員

一橋大学大学院で文化人類学を学び、1999-2000年に刺繍布カンタの文化人類学的調査のため、バングラデシュの村に滞在。2001年に「ベンガルの刺繍カンタ」展(福岡アジア美術館)に携わった後、2003年より現職。これまでに調査し企画した展覧会は、バングラデシュの現代作家「二ルーファル・チャマン」(2007)、「魅せられて、インド。-日本のアーティスト/コレクターの眼」(2012)、「もっと自由に! ガンゴー・ヴィレッジと1980年代・ミャンマーの実験美術」(2012)など。現在、ミャンマーの美術作家のライフヒストリー調査に取り組んでいる。



協賛:ホテルグランドシティ レストランセゾン

Joseph-Gonzales



ミャンマー映画特集(1)(2)

日程 11/18(水)ミャンマー映画特集(1)映画『The Monk』上映会・トーク
11/20(金)~11/23(月・祝)ミャンマー映画特集(2)ミャンマー映画3作品上映
会場 東京芸術劇場 アトリエイースト
料金 各回500円(予約優先)

ミャンマー映画特集(1)映画『The Monk』上映会・トーク

日程:11/18(水)18:00 ※受付開始・開場は15分前
会場:東京芸術劇場 アトリエイースト
登壇者:ティーモーナイン(『The Monk』監督)、アウンミン(『The Monk』脚本)


パフォーマンスや演劇のみならず、ミャンマーの芸術文化を多角的に紹介する特集上映の第一弾として、ティーモーナイン監督作品で、若い僧侶の葛藤を描いた作品で、国際的に評価を得ている『The Monk』を上映、本作で脚本を担当したアウンミンとともにトークを行う。
国際交流基金アジアセンターのアジア各国から様々な分野の文化人を招へいする「アジア・文化人招へいプログラム」で来日するアウンミンと監督のティーモーナインが日本で揃い、映画の背景や脚本執筆にいたる経緯などを知る貴重な機会となる。


The Monk

『The Monk』

監督:ティーモーナイン 脚本:アウンミン

撮影:ティンウィンナイン 編集:ゾーウィントェー 録音:サイコンカン 音楽:ヤン・リフトル
出演:チョーニートゥー( 見習い僧ザーワナー) 、ハンネーウェーニェイン(マーラー)、テインスェーミン(ウーダーマ僧院長)、モーサン(ヤワタ僧正)
PRODUCED BY FAMU (Vít Janeček)
2014/チェコ、ミャンマー/91分/ミャンマー語/日本語・英語字幕


【あらすじ】青年ザーワナーはある日、小さな村の僧院に忍びこみ、僧侶として暮らし始める。彼は日々の生活に疑問を抱きながらも、年老いた住職に従いながら生きていた。経済的に苦しくなり、他の僧侶たちが僧院を離れていくなか、住職が病にかかってしまう。誰かが住職、ひいてはその村全体を世話していかなくてはならない。ザーワナーは自身が立ち上がらなければならないと、決意を固めるのだった−−。


Aung Min

アウンミン Aung Min

脚本家、医者、映画監督

医師として、母国ミャンマーで医療に従事する一方、小説や現代アート書籍を執筆。2007年から映画脚本を手がけるようになり、初の監督作である短編ドキュメンタリー『The Clinic』(2013)では、自ら携わる医療現場を映し出した。また、現代の若き僧侶の青春を描いた長編映画『The Monk』(2014/脚本担当)は、ロッテルダム国際映画祭、シンガポール国際映画祭などに出品され注目を集める。現在、映像専門学校Yangon Film Schoolなどで若い映像制作者の指導に力を注ぐなど、ミャンマーの幅広い芸術分野において厚い信頼を寄せられる期待のクリエイターである。2011年からプラハのFAMU(Film and TV School of Academy of Performing Arts)が主催する若手映画制作者育成プログラムMIDPOINTに参加。


ミャンマー映画特集(2)ミャンマー映画3作品上映

11/20(金)~11/23(月・祝)東京芸術劇場 アトリエイースト

 ティーモーナイン監督による、『The Monk』(2014)と『ナルギス – 時間が止まった時』(2009)の2本、くわえて伝統音楽の録音風景が撮影されたドキュメンタリー映画『Beauty of Tradition -ミャンマー民族音楽への旅-』を連日2本立てで上映。日本ではまだミャンマー人による監督映画作品はほとんど紹介されていないが、現在、映画教育が行われはじめ、映画監督として活躍する人々も増えている。また『Beauty of Tradition -ミャンマー民族音楽への旅-』は、伝統音楽について知れるだけではなく、ミャンマーを訪れたことのない人でも、“ミャンマーのいま”を感じ取れる作品である。
 アートシーンのみならず、情勢が大きく変化し、過渡期ともいえる今のミャンマーだからこそ生まれた作品を、東京で目撃する貴重な機会となるだろう。


上映スケジュール ※受付開始・開場は15分前


11/20(金) 18:00『The Monk』
19:45『Beauty of Tradition -ミャンマー民族音楽への旅-』
11/21(土) 13:00『ナルギス – 時間が止まった時』
14:45『Beauty of Tradition -ミャンマー民族音楽への旅-』
11/22(日) 13:00『The Monk』
14:45『Beauty of Tradition -ミャンマー民族音楽への旅-』
11/23(月・祝) 18:00『ナルギス – 時間が止まった時』
19:45『The Monk』


Beauty of Tradition

『Beauty of Tradition -ミャンマー民族音楽への旅-』

監督・音楽・プロデューサー:川端 潤
撮影:万琳はるえ 字幕翻訳:井上さゆり 製作:プロジェクトラム/エアプレーンレーベル 配給協力・宣伝:太秦 
2015/日本/105分/ドキュメンタリー

これまであまり日本では紹介されることのなかった、手つかずのミャンマー伝統音楽を残したいという想いから、2013年にヤンゴン郊外の小さなスタジオに機材の持ち込み、録音、撮影を慣行。現地の演奏家による100曲にものぼる収録曲は世界でも珍しく、アーカイブとしても価値のある音源となり、その録音風景を撮影したドキュメンタリー。 サインワインなどの演奏風景を中心に、僧院や水かけ祭りの様子も収められており、ミャンマーの街並なども見て取れる。映像からは楽器がどの様なものなのか、そして演奏家たちがいかに考え、悩み、録音していったのかが生々しく伝わってくる―。



Maedchen

『ナルギス – 時間が止まった時』

監督:ティーモーナイン、ペマウンセイン
撮影:Tin Win Naing, Thaiddhi, Pe Maung Same 音楽:Kyaw Myo Lwin 編集:Myo Min Khin, Stewart Young ASE プロデューサー(ミャンマー):Thu Thu Shein 指導:Ulrike Schaz 製作:Lindsey Merrison Film in association with ZDF Das kleine Fernsehspiel, Commissioning Editor Lucas Schmidt
2009/ミャンマー、ドイツ/90分/ミャンマー語/ドキュメンタリー/日本語字幕
© Lindsey Merrison Film

【あらすじ】2008年にミャンマーのエーヤワディー川を襲ったサイクロン「ナルギス」。14万人もの死者を出したこの大災害直後の様子を描いたドキュメンタリー作品である。政府によって撮影が禁止されているなか、サイクロン発生の7日後、若手の映画製作者たちは荒れ果てた村を訪れ、災害によりすべてを失ってしまった人々に会う。被害者たちのコアな部を捉えた映像は、生と死が隣り合わせであること、そして自然災害が多くの人々の暮らしをどれほどまでに変えてしまうのかを描いている。



ミャンマー映画特集(3)

映画『The Monk』上映・監督によるトーク

共催:ポレポレ東中野


11/11(水)20:30 
会場:ポレポレ東中野(中野区東中野4丁目4−1 ポレポレ坐ビル地下)
登壇者:ティーモーナイン(『The Monk』監督)
料金:1500円


ティーモーナイン監督作品『The Monk』をポレポレ東中野にて日本初上映する。若い僧侶の葛藤を描きつつ、ミャンマー独特の風景や文化にも触れられる作品を、一夜限定で映画館にて見られる貴重な機会。上映後にティーモーナイン監督によるトークショーを開催、映画に込めた思いや経緯が語られる。


The Monk

『The Monk』

監督:ティーモーナイン 脚本:アウンミン

撮影:ティンウィンナイン 編集:ゾーウィントェー 録音:サイコンカン 音楽:ヤン・リフトル
出演:チョーニートゥー( 見習い僧ザーワナー) 、ハンネーウェーニェイン(マーラー)、テインスェーミン(ウーダーマ僧院長)、モーサン(ヤワタ僧正)
PRODUCED BY FAMU (Vít Janeček)
2014/チェコ、ミャンマー/91分/ミャンマー語/日本語・英語字幕


【あらすじ】青年ザーワナーはある日、小さな村の僧院に忍びこみ、僧侶として暮らし始める。彼は日々の生活に疑問を抱きながらも、年老いた住職に従いながら生きていた。経済的に苦しくなり、他の僧侶たちが僧院を離れていくなか、住職が病にかかってしまう。誰かが住職、ひいてはその村全体を世話していかなくてはならない。ザーワナーは自身が立ち上がらなければならないと、決意を固めるのだった−−。

ムービー

インタビュー


ミャンマー音楽界きっての異才・ターソーとは


 ターソーのことを知っている日本人は決して多くはないだろう。それどころか、ミャンマーにヒップホップのシーンが存在していること自体ご存知ない方も多いはずだ。彼は90年代末、軍事政権下で産声を上げたミャンマー・ヒップホップ・シーンの第一世代を代表する人物。2000年代以降はミャンマー伝統音楽とエレクトロ・ハウスを融合したオリジナリティー溢れる作風を確立し、近年ではミャンマー音楽界きっての異才として国外でも少しずつその名を知られようになってきている。

 国外の音楽情報がほぼ遮断されていた90年代のミャンマーにおいて、ヒップホップやロックといった欧米のポップ・カルチャーに触れるのは至難の業だったという。ターソーはそんななか、「海外を回ってる船乗りたちが持って帰ってきたカセットテープや、タイで誰かが買ってきた海賊版のテープのコピー」を何とか入手するなかでヒップホップに開眼。ドクター・ドレーやN.W.A、スヌープ・ドッグに夢中になったという。97年ごろにはW.Y.Wなるヒップホップ・クルーに参加。2000年にはより本格的なヒップホップ・グループであるセオリーを結成する。

「当時のミャンマーは今と比べものにならないぐらい自由もなかったし、友人と話す内容にも気を使わなくちゃいけなかった。僕らはそういう状況をヒップホップで変えたかったし、その思いはアメリカのゲットーに住む黒人たちと同じだったんじゃないかな。僕らにとってのヒップホップとは抑圧されている側が自分たちのことを表現するためのツールのようなものだったんだ」

 音楽制作に関するより高いレヴェルの知識とスキルを学ぶため、ターソーは2001年からの3年間、ロンドンに留学。ドラムンベースやハウスのシーンに触れる一方、ミャンマー伝統音楽の研究に力を注ぐことになる。

「ミャンマーのアーティストはみんな欧米音楽のコピーばかりでね。数組を除いてオリジナルティーの一切ないアーティストばかりだったし、僕自身、そういう状況を恥ずかしく思っていた。自分が何をやるべきか考えていくなかで、ミャンマーの伝統音楽のリサーチを始めることにしたんだ。そのなかで出会った伝統音楽がまるでエレクトロ・ハウスみたいに聴こえてね。その両者を融合することができたら、きっと素晴らしいものができるんじゃないかと思うようになったんだ」

 2004年末にミャンマーに帰国したターソーは、そうしたアイデアの実現に向けて実験を繰り返し、2006年のファースト・アルバム『Yaw Tha Ma Mhwe』でその成果を発表。同作は当時あまりに革新的な内容から「ミャンマーの伝統文化を破壊するものとして僕のことを批判する人も多かった」というが、近年はそうした状況も変わりつつあり、ミャンマー国内でも最先端のポップ・ミュージックの創造者として広く注目を集めている。

 2011年3月の民政移管以降、ミャンマーはさまざまな局面において急激な発展と変化を続けている。伝統と革新のせめぎ合いのなかから〈新しいミャンマーの音〉を紡ぎ出そうとしているターソーは、そんなミャンマーの現在の姿を体現する存在とも言えるだろう。また、変化を続けるミャンマーのポップ・シーンにおいてターソーの存在感は日に日に増しつつあるが、それは彼が世界レヴェルのエレクトロニック・ミュージックのクリエイターである一方、欧米文化のモノマネではないミャンマーならではの独自性というものを強く意識した作品作りを続けていることも影響しているだろう。急激な発展を遂げるアジアの〈新しい顔〉。それがターソーなのだ。

「今後はアメリカで英語アルバムをリリースしたいと思っている。別に有名になりたいわけじゃなくて、いろんな舞台で活動してみたいと思っているんだ」――そう話すターソーは現在、日本をテーマにした楽曲も密かに制作中だとか。11月の『ラウンドアバウト・イン・ヤンゴン』ではどんなパフォーマンスを披露してくれるのか、本当に楽しみだ。

(インタビュー/文・大石始)

キャスト/スタッフ

〔A プログラム〕
構成・出演 ティーモーナイン
演出・出演 ニャンリンテッ
出演 スーモンアウン
〔B プログラム〕
音楽・出演 ターソー
出演 キンニーラーセイン、シュエイーウィン、チッスーカイン、ティーリーハン
会場構成 佐野文彦
照明、舞台監督コーディネート 田代弘明(株式会社DOTWORKS)
音響コーディネート 堤田祐史(WHITELIGHT)
テクニカルコーディネート 遠藤 豊(LUFTZUG)
翻訳 山本文子、本行沙織、足立チョチョアイ(ミャンマー語)、岸本佳子(英語)
通訳 石井園子
制作 松嶋瑠奈、喜友名織江
制作アシスタント 堀 朝美
共催 独立行政法人国際交流基金アジアセンター
主催 フェスティバル/トーキョー
Asia Center