劇評

アメリカン・ドリーム・ファクトリー

F/Tで上演された各作品、企画についての劇評アーカイブです。
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ポストリアリズムへの探求

セノ・ジョコ・スヨノ
翻訳:加藤ひろあき

 去る11月22日、にしすがも創造舎 (i) のグラウンドに大きな穴が一つぽっかりと口を開けていた。もともと耕作地であったように思われるその土地は手入れされることなく放置されていた。盛られた土の上にはシャベルが数本、ごろんと転がっている。そしていくつかの木箱、見たところコンテナのようなものが穴の横に無造作に置かれていた。わたしは最初、これはインスタレーションアートだろうと考えた。しかも、ごくありふれたインスタレーションだと。

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この既視感はどこから来るのか


 20世紀を表象する言葉とはなんだろうか。戦争、革命、運動、マイノリティなど、挙げればいくつもでてくる。ただし、それらの言葉がもつ視点から時代を切り取ると、20世紀というものがもった、ある現象が鋭利に浮かんでくる。だからこそ、そこに一つ言葉を足してみると、移動という言葉がでてくるのではないか。
 むろん、人が移動すること自体は、有史以前からある。しかし、その形態を分析すると、20世紀から現在までの移動という問題は、また違った位相として現れる。19世紀に現れたヨーロッパからアメリカへと移動する大規模な人口は、20世紀になると多様な移動の流れを生み出した。また、強制連行やポスト・コロニアルという言葉に代表されるように、宗主国と植民地のなかでの移動もある。ただ、それらが貧困というものを大きなバネとしていたのに対して、夢を叶えるための移動というものが生まれたのが、20世紀末の特徴ではないか。いわば、単に貧しさから富裕層を目指すための移動ではなく、自己実現を求めた移動。

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