劇評

美しい星

F/Tで上演された各作品、企画についての劇評アーカイブです。
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先鋭を夢見る――フェスティバル/トーキョー12で観たアートと政治にまつわる所感


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 東京滞在の初日、私はセゾン財団の事務所に連れて行かれた。そこで、ヴィジティング・フェローとして森下スタジオで過ごす32日間のレジデンスで何が可能か話し合う予定だったのだ。

 まったく初めての来日だったため、日本のいかなる芸術的で文化的な体験を受け入れようとする気持ちがありながらも、シンガポールでは演劇およびその学問が政治的になっているという傾向もあり、心の奥底で描いていた優先事項の一つは、アートと政治、社会とアクティビズムの関わりを体感することだった。

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倫理の動物、動物の倫理――シニシズムへの態度


 2012年のフェスティバル/トーキョー(F/T)のテーマは「ことばの彼方へ」であったが、上演された八割方の作品を観て、あらためて振り返ったときに、例年よりもテーマを意識したと思われる作品が多かったように感じた。

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ノスタルジーとメランコリーをこえて


 久方ぶりに、若手でありながらも、演劇の時流を賢しく考えて作品を創らない集団がいた。むろん、そのような文脈を気にすることは、概して日本の小劇場文化と一笑に付されてしまうものに過ぎない。 今回、ピーチャム・カンパニーが上演した三島由紀夫原作の『美しい星』は、昨年のフェスティバル/トーキョーの公募プログラムで上演された『復活』という作品とは、一線を画したものとなった。『復活』を覆う作品の色合いは、一言でいえば「アングラ」だった。黒テントか唐十郎の影響でも受けたのだろうか、なぜいまさら彼らはこのようなアングラ・スペクタクルロマンに憧れ、アングラ・ノスタルジーに染まった作品を作らなくてはいけないのか、まったく理解できなかった。少なくとも、3・11や福島という問題を扱っていても、どのような形であれ「革命」を問わずして、アングラの衣裳をまとっても無意味に思われたからだ。

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