劇評

エンジェルス・イン・アメリカ

F/Tで上演された各作品、企画についての劇評アーカイブです。
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役者という使者の祝祭 (『エンジェルス・イン・アメリカ』)

小澤英実

 トニー・クシュナーの『エンジェルス・イン・アメリカ』(以下AIAと表記)は、エイズパニックがアメリカ本土を席巻した90年代初頭に書かれたアメリカ現代演劇の金字塔的戯曲である。アメリカ社会を構築する三大要素とされる「人種・階級・ジェンダー」に、「政治と宗教とセクシュアリティ」という3項を導入することで、共同体幻想を粉砕するようなアメリカ国家のマトリクスを観客にまざまざと見せつける。それは多民族国家アメリカの病理と救済の物語であり、ひとりのユダヤ系アメリカ人が、アメリカという内なる他者を理解しようとして書いた、途方もなく野心的な戯曲であり、第一部・第二部を通しで上演すれば、ゆうに7時間におよぶ壮大なスケールの叙事演劇である。1

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