F/T10会見コメント・テキスト版4:松田正隆


会見コメント・テキスト版4:松田正隆さんです

動画は⇒コチラです(会見動画7)

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Q
今回「HIROSHIMA」(広島)「HAPCHEON」(ハプチョン)という
2つの都市のドキュメントから出発して、
それらを舞台作品としてではなく
あえて展覧会ということで展示するという選択をされる。と、お伺いしました。

その会場はちょうど今われわれがいるこの明日館の講堂なんですけれど、
ぜひ、今回の試みについてお伺いしたいと思います。


松田
「はい。
えー、そうですね、あのー......ずっと、昨年の春ですかね、
『声紋都市 ―父への手紙っていう作品をF/T(09春)でやらせてもらって。
このとき被爆都市、同じ被爆都市ですけど「長崎」を題材にして、

その次に『PARK CITY』という作品を、山口情報センターと琵琶湖ホールで上演したんですけれど。

その流れで、その『PARK CITY』というのは広島の平和公園を題材にして、
広島の公園を中心に原爆の記憶をずっと祈念するために
いわゆる平和都市としてずっと復興してきたということを
テーマにして作品を創ってきたんですけれども
その流れの中に次の作品もあって。

HIROSHIMA―HAPCHEONという題名ですが
HAPCHEON(ハプチョン)というのは、
広島の中にも沢山の朝鮮半島のHAPCHEONからの移住してきたひとが沢山いて、
韓国の被爆者の半数くらいがHAPCHEON出身の留学者で、
今度の広島を扱う作品の中には、そのことを題材にしたいなというのがあって。

HAPCHEONを題材にするのは
やはり広島ということをテーマにするとどうしても
「私たち」の物語の中に回収されてしまうというところがあって。

国民の受難の、あるいは、よくいうのは、
「唯一の被爆国」っていう言い方をよくしますけど、

HAPCHEONという、いわゆる「私たち」にとっての外部性を導入することによって、
ただ、この言い方もHAPCHEONを証言しながら語ることになるので
非常に危険な作業になるのかもしれないのですけれど、
そのこともやっぱり問題提起しながら
今度の作品はつくっていきたいなと思っています。

どうしてもその、いわゆる......、
今度、展示形式というか、大体60分くらいの作品をループして、
昼の部・夜の部くらいでお客さんが入ってきたら出て行けるように、
自由な時間......60分経ったら出て行くとか、
ずっとそのループを見続ける人がいてもいいだろうし、
というような。

どこから見てもいいように
展覧会形式で作品をつくってみようというのと、
あと俳優がテキストというか、
今まで私が戯曲を書いてきたんだけれども
そのテキストを使わずに、

もう明日から広島に行ったりしますけれど、
その広島に行った出演者がレポートをして、
そのテキストを題材にしながら作品づくりをしたいな、
というふうに思っています。

そのことをすることによって、
やはりこう......こちら側が演じる側、そちら側が聴衆、
という同一方向に同化する空間をつくるのではなくて、

何か起こっているところとは違うところで、
何かが起こっている......要するに、
個人によってその体験の作品の見方が違うようにできるっていうことが、
いま広島を私たちが扱うとき、
今回わたしたちマレビトの会の選択する方法のひとつかなと思っています。


以上 
F/T10記者会見コメント 松田正隆